2017年7月1日土曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #077


077
詞花・巻七
Shika(waka)-shu, vol.7
love
題知らず──新院御製
untitled
瀬を早み
岩にせかるる
滝川の
われても末に
逢はむとぞ思ふ
せをはやみ
いわにせかるる
たきがわの
われてもすえに
あわんとぞおもう
Se o hayami
Iwa ni sekaruru
Taki-gawa no
Warete mo sue ni
Awamu to zo omou.
川瀬の流れが速いので、岩にせきとめられる急流が二手に分かれても、いずれひとつになるように、今は引き離されても、行く末は再び逢おうと思う
The rock divides the stream in two,
And both with might and main
Go tumbling down the waterfall;
But well I know the twain
Will soon unite again.
運命を変えようとする強い意志
流れ落ちる滝のように激しい情熱を含んだ恋歌である。自らの運命を急流にたとえ、分断された仲だけれども、いつかはまた必ず一緒になろうと訴えている。
恋歌ではあるが、崇徳院の生涯を重ね合わせれば、それ以上の深みをもつ歌として考えることもできる。父の鳥羽院からは実子ではない(白河院の子?)ため「叔父子」と呼ばれかわいがられず、譲位を余儀なくされ、保元の乱を起こすも破れて讃岐に流される。そしてそのまま都に戻ることはなかった崇徳院の「必ずや逢おう」という執念は都へ、そして天皇という位へ向けられたものにも思える。
また、定家にとっても和歌の興隆を支えた崇徳院の存在は大きかった。父俊成(しゅんぜい)《歌083》は院の歌壇で華々しい活躍をし、院が讃岐に送られた後も交流を持っていたという。無念のうちに生涯を終えた崇徳院の怨霊にまつわる話は多いが、それもこの歌が激情的な性格を後の世に伝え続けてきたからではないだろうか。
The town of Kamakura, where is the great bronze image of Buddha Amida, was built by this Emperor, who reigned A.D. 1124-1141; he was then forced by his father, the ex-Emperor Toba, to abdicate in favor of his brother, the Emperor Konoye: afterwards he entered the church, and died in the year 1164, and exile in the Province of Sanuki. This verse is intended to suggest the parting of two lovers, who will eventually meet again.
崇徳院 すとくいん THE RETIRED EMPEROR SUTOKU
11191164。第75代天皇。諱(いみな)は顕仁(あきひと)。5歳で立太子、即位。22歳で譲位。新院と呼ばれた。鳥羽天皇の第一皇子であるが、父との不和からのちに保元の乱を起こし、戦い敗れて讃岐(さぬき・香川県)に流され、46歳で崩御。
「金葉集」「詞花集」を撰上させた。中古36歌仙の一人で、御集に「久安御百首」があり、「詞花集」などに77首はいっている。

詞花和歌集(しかわかしゅう)

第6番目の勅撰集。藤原顕輔(あきすけ)《歌079》撰。崇徳上皇《歌077》の下命。1151(仁平元)年頃の成立。「金葉集」と同じく10巻で、歌数は409首と勅撰集では最も少ない。曾禰好忠《歌046》・和泉式部《歌056》・大江匡房(まさふさ)・源俊頼らが多く入集。「後拾遺集」期の歌を重視している。古来、玉石混交と評される。藤原教長(のりなが)「拾遺古今」(散逸)、藤原為教(寂超)「後葉和歌集」は「詞花集」を批判した撰集。
 ──『山川 日本史小辞典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。







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