2017年7月19日水曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #093

※動画は後日投稿します。

093
新勅撰・巻八
Shin-chokusen(waka)-shu, vol.8
覉旅
travel
題知らず──鎌倉右大臣
untitled
世の中は
常にもがもな
渚こぐ
海士の小舟の
綱手悲しも
よのなかは
つねにもがもな
なぎさこぐ
あまのおぶねの
つなでかなしも
Yo no naka wa
Tsune ni moga mo na
Nagisa kogu
Ama no obune no
Tsunade kanashi mo.
世の中は常に変わらないでほしいものだなあ。この渚を漕いで行く漁師の小舟の、引き綱を引くさまは、趣深く心が引かれることだ
I love to watch the fishing-boats
Returning to the bay,
The crew, all straining at the oars,
And coiling ropes away;
For busy folk are they.
変わることのない日常を願う
常に移り変わっていく世の中への不変の願いと日常の何気ない風景を重ね合わせた巧みな構成である。三句以降に作者が鎌倉の浜で実際に目にした、漁師が引き綱を引いているという、別段珍しくもない光景を持ってくることで、平穏な日常生活の尊さと、初めの二句で語られる、変わってしまう世の中への嘆きが実感を持って心に響いてくる。
この歌は『万葉集』の「川上(かわのへ)のゆついはむらに草むさず常にもがもな常(とこ)をとめにて」と『古今集』の「みちのくはいづくはあれど塩釜の浦漕ぐ舟の綱手かなしも」の二首を本歌にして作られている。古くから使われている言葉を用いながらも、現在の人の世の無常をしみじみと感じさせる詠みぶりは作者の力量によるところだろう。「綱手」は定家も心引かれる題材であったようで、同じように『古今集』の歌を本歌にして「綱手引くちかのしほがまくりかへしかなしき世をぞうらみはてつる」と詠んでいる。
The name of the writer of this verse was Sanetomo Minamoto, the second son of the great General Yoritomo. He was a famous moan of letters, and was murdered in the year 1219 by his nephew, the Priest Kugyo, at the Temple of Hachiman at Kamakura, whiter he had gone to return thanks for his promotion to a high office of state. He seems to have had a premonition of his coming fate; for that morning, while being dressed, he composed the farewell poem to his plum tree given in the Introduction, and pulling out a hair he gave it to his servant, bidding him keep it in memory of him. The assassin sprang out from behind a tree, which is still pointed out today, growing at the side of the temple steps, cut him down, and ran off with the head. Kugyo was caught and executed, but the head was never found, and so the single hair was buried in its stead.
鎌倉右大臣 かまくらのうだいじん THE MINISTER OF THE RIGHT DISTRICT OF KAMAKURA
源実朝(みなもとのさねとも・11921219)。源頼朝(よりとも)の二男。兄頼家が伊豆の修善寺に蟄居(ちつきょ)したあとをうけ12歳で従五位上、第3代征夷大将軍となる。建保6(1218)年12月に右大臣左大将になったが、翌承久元年1月27日夜、鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)に拝賀の帰り、甥の公卿(くぎょう)に暗殺された。28歳。
歌は定家に師事し、家集に『金槐(きんかい)和歌集』がある。勅撰歌としては『新勅撰集』などに81首がはいっている。

新勅撰和歌集(しんちょくせんわかしゅう)

第9番目の勅撰和歌集。20巻。歌数1374首。後堀川天皇の命により藤原定家《歌097》が撰した。1235(文暦2)年成立。1234(天福2)年6月、未定稿を仮奏覧したが2ヵ月後に後堀河院が崩御。落胆した定家は手もとの草案を焼却、九条道家が仮奏覧本を尋ね出し完成を促した。後鳥羽《歌099》・順徳《歌100》両院ら承久の乱関係者の歌は除かれ、九条・西園寺(さいおんじ)等の親幕派と武家の詠が優遇されている。歌風は平明温雅『新古今和歌集』の余情妖艶から退いて、三代集の歌風に帰っている。
  ──『古語林 古典文学事典/名歌名句事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。






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