2017年5月29日月曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #064


064
千載・巻六
Senzai(waka)-shu, vol.6
winter
宇治まかりて侍けるときよめる──中納言定頼
when visiting Uji.
朝ぼらけ
宇治の川霧
たえだえに
あらはれ渡る
瀬々の網代木
あさぼらけ
うじのかわぎり
たえだえに
あらわれわたる
せぜのあじろぎ
Asaborake
Uji no kawagiri
Tae-dae ni
Araware wataru
Seze no ajiro-gi.
夜が明けるころ、宇治川の川霧がとぎれとぎれに晴れてくると、そこここに現れてくる川瀬の網代木であるよ
So thickly lies the morning mist,
That I can scarcely see
The fish-nets on the river bank,
The River of Uji,
Past daybreak though it be.
刻々と変わる風景をそのまま詠み込む
明け方、辺りが明るくなってくるとともに、川を覆っていた霧がとぎれとぎれに晴れてきて、いままでは隠れていた網代木がゆっくりとその姿を現す。感情を一切挿入せずに、景色をありのままに歌った叙景歌だが、徐々に景色が変わっていくその時間の流れを表現したところが斬新である。
宇治川は『源氏物語』の宇治十帖の舞台となった場所であり、霧とともにこの時代の和歌によく詠まれた。
The writer was the son of the author of verse No. 55; he died in the year 1004. The River Uji is in the Province of Omi, and drains into Lake Biwa. Seze is a village on the lake-side, and a suburb of the larger town of Otsu. The poet, looking across the river, can hardly make out the fish-nets on the shore at Seze, because of the rising morning mist.
権中納言定頼 ごんのちゅうなごんさだより THE ASSISTANT IMPERIAL ADVISER SADAYORI
藤原定頼(9951045)。大納言公任(きんとう)《歌055》の長男で、侍従右近衛少将(じじゅううこんえのしょうしょう)を経て権中納言となった。小式部内侍(こしきぶのないし)《歌060》との逸話が有名。
詩歌、書画にすぐれ、歌人としても知られた。代表作に「水もなくみえわたるかな大井河峰の紅葉は雨とふれども」が伝えられている。晩年は病気で官を辞し、出家した。中古36歌仙の一人で「権中納言定頼集」がある。勅撰歌は「後拾遺集」などに42首はいっている。

千載和歌集(せんざいわかしゅう)

鎌倉前期、第7番目の勅撰和歌集。八代集のひとつ
1187年完成。20巻。歌数約1200首。後白河法皇の命で藤原俊成《歌083》が撰した。『金葉和歌集』『詞花和歌集』両集の新奇の風を否定し、古今的伝統への復帰を志し、清新な感覚に支えられた感傷的情緒性が目だつ。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年5月28日日曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #063


063
後拾遺・巻十三
Go-shui(waka)-shu, vol.13
love
伊勢の斎宮(さいぐう)わたりよりまかり上(のぼり)て侍ける人に忍びて通ひけることをおほやけもきこしめしてまもりなどつけさせ給て忍にもかよはず成(なり)にければ詠み侍ける──左京大夫道雅
when secret affairs with a princess serving Ise Shrine were prohibited by the Emperor.
今はただ
思ひ絶えなむ
とばかりを
人づてならで
いふ由もがな
いまはただ
おもいたえなむ
とばかりを
ひとづてならで
いうよしもがな
Ima wa tada
Omoi-taenamu
Tobakari wo
Hitozute narade
Iu yoshi mo gana.
今となっては、ただ、あなたをあきらめますということだけでも、人づてではなく、直接逢ってお伝えする方法があればよいのですが
If we could meet in privacy,
Where no one else could see,
Softly I’d whisper in thy ear
This little word from me
I’m dying, Love, for thee.’
悲恋の末の美しく悲しい歌
作者の藤原道雅(ふじわらのみちまさ)は、三条天皇《歌068》の皇女で、伊勢の斎宮(さいぐう)を務めて宮廷に戻った当子(まさこ)と恋仲になった。これを耳にした天皇は激怒し、見張りの女房をつけたため、ふたりは逢えなくなる。このときの絶望的な心情を歌ったのがこの歌である。いいようもない深い悲しみが実感を持って迫ってくる。この件で道雅は出世の道を絶たれ、すさんだ日々を過したという。一方の当子は、失意のなか尼になり、そのまま生涯を終えた。
Michimasa was a member of the Fujiwara family, who lived about the year 1030. He fell in love with the Princess Masako, a priestess of Ise; but when Emperor heard of this, he put the Princess into confinement, where she was strictly guarded by female warders, and this verse was Michimasa’s request to her to try to arrange a private meeting with him. The words omoi-taenamu, which is the message he sends to her, mean, ‘I shall die of love’; but they can also mean ‘I shall think no more about you’; so perhaps he intended the verse to be read in different ways, according to whether it reached the Princess, or fall into the hands of her guards.
[In the picture Michimasa is shown outside the fortress, where the Princess is confined.]
左京大夫道雅 さきょうのだいぶみちまさ THE SHINTO OFFICIAL MICHIMASA, OF THE LIFT SIDE OF THE CAPITAL
藤原道雅(9941054)。伊周(これちか)の子で、道隆の孫にあたる。蔵人頭、右京大夫を歴任、寛徳2(1045)年に左京大夫となる。本歌は相思の仲であった三条天皇の第一皇女常子内親王(前斎宮当子・さきのさいぐうまさことも)との逢瀬が許されなくなったときの歌である。実権のない従三位(じゅうさんみ)左京大夫のままで生涯を終える。
勅撰集には7首はいっている。

後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)

第4番目の勅撰集。藤原通俊(みちとし)撰。白河天皇の命で1086(応徳3)年に奏覧、改訂をへて87(寛治元)年に完成。「古今集」以来の仮名序をもち、四季6巻・賀・別・き旅・哀傷・恋4巻・雑6巻の20巻。歌数1218首。雑6に神祇歌と釈教歌をはじめて収録。主要歌人は和泉式部《歌056》(67首)、相模《歌065》(40首)、赤染衛門《歌059》(32首)、能因《歌069》(31首)、伊勢大輔《歌061》(27首)など。女流の進出が目立つ。源経信により勅撰集に対するはじめての論難「難後拾遺」が書かれた。
 ──『山川 日本史小辞典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年5月27日土曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #062


062
後拾遺・巻十六
Go-shui(waka)-shu, vol.6
other
大納言行成物語などし侍けるに内の御物忌(ものいみ)にこもればとていそぎ帰りてつとめて鳥のこゑにもよほされてといひをこせて侍ければ夜深かりける鳥のこゑは函谷関のことにやといひつかはしたりを立ちかへりこれは逢坂の関に侍とあればよみ侍ける──清少納言
responding to Minister Yoshinari’s verse referring rooster’s voice, inquiring if that voice was the one at Kankokukan.
夜をこめて
鳥の空音は
はかるとも
世に逢坂の
関はゆるさじ
よをこめて
とりのそらねは
はかるとも
よにおうさかの
せきはゆるさじ
Yo wo komete
Tori no sorene was
Hakaru tomo
Yo ni Ausaka no
Seki wa yurusaji.
夜の明けないうちに、鶏の鳴き真似をして、函谷関(かんこくかん)はだませたとしても、逢坂の関はそうはいきません。私は決して逢いませんよ
Too long to-night you’ve lingered here,
And, though you imitate
The crowing of a cock, ‘twill not
Unlock the tollbar gate;
Till daylight must you wait.
教養高きふたりの和歌のやりとり
この歌には長い詞書(ことばがき)がある。それによると、藤原行成(ふじわらのゆきなり)と作者は物語をしていたが、宮中の物忌(ものいみ)のために行成は夜中に帰った。明くる朝、「昨晩は鶏の声にせき立てられて帰ったが、名残惜しい」と文をよこしたので、清少納言は『史記』の故事をふまえ、「その声は、函谷関を開けたという、孟掌君(もうしょうくん)の鳴き真似の声か」と返した。すると「あなたに逢うという逢坂の関ですよ」といってきたので、この「夜をこめて~」の歌を贈ったというのである。『枕草子』に記された長いやりとりの一説に登場するのがこの歌で、さらに行成は「逢坂は人越えやすき関なれば鶏鳴かぬにもあけて待つとか」と戯れて返してきたと書かれている。
贈答歌ながら恋歌ではなく、知識人同士の機知を織り交ぜた言葉遊びの応酬といったところだろうか。ユーモアを含みながらも、きっぱりと逢うことを拒絶しているところに、しっかり者で明朗な清少納言の素顔がうかがえる。
The Lady Sei, Sho-nagon being merely a title, was the daughter of the writer of verse No. 42, and the authoress of Makura-no-Soshi, or ‘A story book to keep under one’s pillow’; she was, with the writer of verse No. 57, one of the greatest of Japanese authors. She was a lady-in-waiting at Court, and ritired to a convent in the year 1000. This verse has reference to the Chinese story of Prince Tan Chu, who was shut up with his retainers in the town of Kankokkan; the city gates were closed from sunset to cockcrow, but during the night one of the Prince’s followers so successfully imitated the crowing of a cock, that the guards, thinking it was daybreak, opened the gates, and the fugitives escaped under cover of the darkness. It is related, that the Emperor once noticed Lady Sei admiring the freshly fallen snow, and asked ‘How is the snow of Koroho?’ She at once raised the window curtain, showing that she recognized the allusion to the verse ‘The snow of Koroho is seen by raising the curtain’.
清少納言 せいしょうなごん THE LADY SEI
生没年未詳。清原元輔(きよはらのもとすけ)《歌042》の娘。祖父は清原深養父(きよはらのふかやぶ)《歌036》。一条天皇の皇后定子(ていし)に仕え、和漢の学に歌にみがきをかけた。橘則光と結婚したが失敗。晩年は尼になったともいわれる。
随筆「枕草子」の著者で、紫式部《歌057》とならび称される才女である。中古36歌仙の一人で「清少納言集」がある。「後拾遺集」などに勅撰歌15首。

後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)

第4番目の勅撰集。藤原通俊(みちとし)撰。白河天皇の命で1086(応徳3)年に奏覧、改訂をへて87(寛治元)年に完成。「古今集」以来の仮名序をもち、四季6巻・賀・別・き旅・哀傷・恋4巻・雑6巻の20巻。歌数1218首。雑6に神祇歌と釈教歌をはじめて収録。主要歌人は和泉式部《歌056》(67首)、相模《歌065》(40首)、赤染衛門《歌059》(32首)、能因《歌069》(31首)、伊勢大輔《歌061》(27首)など。女流の進出が目立つ。源経信により勅撰集に対するはじめての論難「難後拾遺」が書かれた。
 ──『山川 日本史小辞典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年5月22日月曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #061


061
詞花・巻一
Shika(waka)-shu, vol.1
spring
一条院御時ならの八重桜を人の奉りけるをそのをり御前に侍ければそのはなを題にて歌詠めとおほせごとありければ──伊勢大輔
order by Emperor Ichijo when people provided double-petaled cherry from Nara to the emperor
いにしへの
奈良の都の
八重桜
けふ九重に
にほひぬるかな
いにしえの
ならのみやこの
やえざくら
きょうここのえに
においぬるかな
Inishie no
Nara no Miyako no
Yaezakura
Kyo kokonoe ni
Nioi nuru kana.
昔の奈良の都の八重桜が、今日はこの九重の宮中で、いっそう美しく咲き誇っている
The double cherry trees, which grew
At Nara in past days,
Now beautify this Palace, and
Their blossoms all ablaze
Perfume the royal ways.
伊勢大輔の華々しいデビュー作
《歌060》と同じく、歌とともに逸話が伝えられる一首である。
一条天皇の時代に、奈良から八重桜が謙譲された。それを受け取る役を務めるはずの紫式部《歌057》は、まだ出仕して間もない女房の伊勢大輔にその役を譲った。さらに道長(みちなが)から一首詠むように命じられ、とっさに詠んだのがこの歌である。
作者は頼基(よりもと)、能宣(よしのぶ)《歌049》、輔親(すけちか)など歌人の多い家系に生まれ、その歌才が注目されていた。歌人としての力量を試されるプレッシャーのなかで、桜の美しさをたたえながら、一条天皇の宮廷もたたえ、技巧をちりばめた詞(ことば)を「の」音を重ねた流麗な調べに乗せて詠み切ったのである。
このときの様子を『袋草紙(ふくろぞうし)』は「殷を始め奉りて万人感歎、宮中鼓動す」と伝えている。歌人として、これ以上ない華々しいデビューであった。
The Lady Ise was another of the famous literary women, the distinguished the Imperial Court at the end of the tenth century; she was associated with the Province of Ise, from which she gets her name. Nara was the capital city from A.D.709 to 784, after which the Court moved to Kyoto. It is related, that during the reign of the Emperor Ichijo (A.D. 987-1011) a nobleman presented him with a spray of the eight-petalled cherry trees that grew at Nara; the Emperor was so delighted, that he had the trees, or perhaps cuttings from them, brought to Kyoto, and this verse commemorates the event.
Kokonoe (Palace) really means ‘ninefold’, and refers to the nine enclosures of the Imperial Residence; it is here contrasted with yaezakura, the eightfold or double cherry blossom.
伊勢大輔 いせのだいふ THE LADY ISE
生没年未詳。大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ)の孫で、伊勢の祭主(さいしゅ)輔親(すけちか)の娘である。父が伊勢の祭主で神祇官の大輔、のち伯であったので伊勢大輔と呼ばれた。歌人が輩出した家に育ち、上東門院彰子に仕え、紫式部《歌057》、和泉式部《歌056》、相模《歌065》らと親交、長久2(1041)年ころ歌人として名が知られた。のち、筑前守(ちくぜんのかみ)高階成順(たかはしなりよし)の妻となった。
中古36歌仙の一人で、「伊勢大輔集」があり、「後拾遺集」などに51首はいっている。

詞花和歌集(しかわかしゅう)

第6番目の勅撰集。藤原顕輔(あきすけ)《歌079》撰。崇徳上皇《歌077》の下命。1151(仁平元)年頃の成立。「金葉集」と同じく10巻で、歌数は409首と勅撰集では最も少ない。曾禰好忠《歌046》・和泉式部《歌056》・大江匡房(まさふさ)・源俊頼らが多く入集。「後拾遺集」期の歌を重視している。古来、玉石混交と評される。藤原教長(のりなが)「拾遺古今」(散逸)、藤原為教(寂超)「後葉和歌集」は「詞花集」を批判した撰集。
 ──『山川 日本史小辞典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年5月21日日曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #060


060
金葉・巻九
Kin’yo(waka)-shu, vol.9
other
和泉式部保昌に具(ぐ)して丹後に侍ける比(ころ)都に歌合侍りけるに小式部内侍歌詠みにとられて侍けるを中納言定頼つぼねのかたにおうできて歌いかがさせ給ふ丹後へ人はつかはしけむやつかひはまうでこずやいかに心もとなくおぼすらむなどたはぶれて立(たち)けるをひきとどめてよめる──小式部内侍
responding to Sadayori pulling legs saying “did you asked your mother to make verses?”, invited to a verse competition when her mother was gone to Tango
大江山
いく野の道の
遠ければ
まだふみも見ず
天の橋立
おおえやま
いくののみちの
とおければ
まだふみもみず
あまのはしだて
Ohoye yama
Ikuno no michi no
Tohokereba
Mada fumi mo mizu
Ama-no-Hashidate.
母のいる丹後は、大江山を越え、生野を通って行く道が遠いので、まだ天の橋立を踏んだことはありませんし、母からの文も見ていません
So long and dreary is the road,
That I have never been
To Ama-no-Hashidate;
Pray, how could I have seen
The verses that you mean?
才気が光るとっさの一首
この歌にまつわる逸話が有名である。一流歌人の和泉式部(いずむしきぶ)《歌056》を母に持つ作者は、母が父について丹後へ行っている間に、歌合に招かれた。それを知った藤原定頼《歌064》が「母上に代作は頼みましたか。まだ使いは戻りませんか。さぞかしご心配でしょう」とからかったので、それを受けて即座に詠んだ歌である。これによって小式部内侍は代作疑惑を払拭すると同時に、歌人としても名を上げた。
Koshikibu was the daughter of the writer of verse No. 56, and early became known as a poetess. The story goes, that she was suspected of getting help from her mother in composing poetry; and on one occasion, during the absence of the latter at Ama-no-Hashidate, she was selected to take part in a poetical contest at Court. A day or two before the event a nobleman laughingly asked her, if she was not expecting a letter from her mother, hinting that she would otherwise be unable to produce a poem good enough for the contest, and she, touching his sleeve, improvised the above verse. The original brings in not only Ama-no-Hashidate, a picturesque bay in the Province of Tango, but also two other proper names, Mount Ohoye and Ikuno, which are on the road there from Kyoto; but this the translation fails to do.
The last couplet can mean ‘I have not walked to or seen Ama-no-Hashidate’ and also, ‘I have not seen any letter from Ama-no-Hashidate.’
小式部内侍 こしきぶのないし LADY-IN-WAITING KO-SHIKIBU
生年未詳。橘道真(たちばなのみちざね)の娘で、母は和泉式部《歌056》。母の式部にちなんで小式部と称された。母と同様に一条天皇の中宮彰子(しょうし)に仕えた。万寿2(1025)年に256歳の若さで病没。勅撰集にとられている歌は「後拾遺集」などに4首。

金葉和歌集(きんようわかしゅう)

第5番目の勅撰集。源俊頼(としより)《歌074》撰。白河法皇の下命。1124(天治元)年の初度本、翌年の二度本とも返却され、三奏本は26年かその翌年に草稿として奏覧され、そのまま受納されたという。書名は優れた和歌の集の意。四季・賀・別離・・恋上下・雑上下の10巻。代表歌人は源経信・源俊頼・藤原公実(きんざね)・藤原顕季(あきすえ)ら。「古今集」以来の伝統から脱した新鮮な歌風を特色とする。
 ──『山川 日本史小辞典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年5月20日土曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #059


059
後拾遺・巻十二
Go-shui(waka)-shu, vol.12
love
なかの関白少将に侍ける時はらからなる人に物いひわたり侍けりたのめてこざりけるつとめて女にかはりてよめる──赤染衛門
representing a sister who stayed up waiting for a man’s visit
やすらはで
寝なましものを
小夜更けて
傾くまでの
月を見しかな
やすらわで
ねなましものを
さよふけて
かたぶくまでの
つきをみしかな
Yasurawade
Nenamashi mono o
Sayofukete
Katabuku made no
Tsuki wo mishi kana.
最初からいらっしゃらないとわかっていたら、ためらうことなく寝てしまったでしょうに。あなたを待っていたばっかりに夜が更けて、西の空に傾く月を見たことです
Waiting and hoping for thy step,
Sleepless in bed I lie,
All through the night, until the moon,
Leaving her post on high,
Slips sideways down the sky.
待つ女の諦めを含む嘆き
詞書によると、男を待って夜を明かしてしまった女性(作者の姉妹とも)に代わり、作者が詠んだものである。ただし、実際に赤染衛門の作であるかは不明。
歌のなかにはどこか諦めた雰囲気も漂い、相手を強く責めるようすは受け取れない。作者の優しさの表れか、それとも完全な失望なのだろうか。ちなみにこの歌を贈られた男は、後に儀同三司母(ぎどうさんしのはは)《歌054》の夫となる、藤原道隆である。
This writer is again a lady; she is said to have addressed the verse to Michinaga Fujiwara, who held the office of Regent under the Emperor Ichijo (A.D. 987-1011) and his two successors. Regent here must be understood not exactly as a temporary or vice Emperor, but rather as the Emperor’s confidential adviser, and the official through whom all communications were made.
[Notice the moon in the illustration just disappearing behind the hill.]
赤染衛門 あかぞめえもん AKAZOME EMON
生没年未詳。赤染時用(ときもち)の娘で、父の官名(右衛門尉・うえもんのじょう)でよばれた。のち、文章博士大江匡衡(まさひら)の妻となった。良妻賢母として有名。和泉式部、清少納言、伊勢大輔(たいふ)などとも親しく、長和元(1011)年に夫と死別し、尼となった。
和泉式部とならび称される平安中期の代表的女流歌人で「栄華(えいが・栄花)物語」の作者といわれる。中古36歌仙の一人で、家集に「赤染衛門集」があり、勅撰歌は「拾遺集」などに93首はいっている。

後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)
第4番目の勅撰集。藤原通俊(みちとし)撰。白河天皇の命で1086(応徳3)年に奏覧、改訂をへて87(寛治元)年に完成。「古今集」以来の仮名序をもち、四季6巻・賀・別・き旅・哀傷・恋4巻・雑6巻の20巻。歌数1218首。雑6に神祇歌と釈教歌をはじめて収録。主要歌人は和泉式部《歌056》(67首)、相模《歌065》(40首)、赤染衛門《歌059》(32首)、能因《歌069》(31首)、伊勢大輔《歌061》(27首)など。女流の進出が目立つ。源経信により勅撰集に対するはじめての論難「難後拾遺」が書かれた。
 ──『山川 日本史小辞典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





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