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古今・巻九
Kokin(waka)-shu, vol. 9 |
旅
travel |
もろこし(唐土)にて月を見て詠みける──安倍仲麿
watching the moon in Tang | ||
天の原
ふりさけ見れば
春日なる
三笠の山に
出でし月かも |
あまのはら
ふりさけみれば
かすがなる
みかさのやまに
いでしつきかも |
Ama no hara
Furisake-mireba
Kasuga naru
Mikasa no yama ni
Ideshi tsuki kamo. |
大空を仰げば、はるかに月が出ているが、あの月はかつて故郷の春日にある三笠の山に出ていた月なのかなあ |
While gazing up into the sky,
My thoughts have wandered far;
Methinks I see the rising moon
Above Mount Mikasa
At far-off Kasuga. | |
月に思いを寄せながら大海原を漂う
この歌はかつて遣唐留学生として唐に派遣されていた安倍仲麿が、帰国の途中に月を眺め、望郷の思いを詠んだ歌とされる。
空に輝く月を眺めながら、心の内では故郷の三笠山に出ていた月を重ねて懐かしみ、生涯帰国することのなかった仲麿の無念の思いまでも伝わってくるようである。
帰郷に際して詠まれたとされるこの歌がどのようにして伝わったのかは不明だが、古今調の作風から、何物かが仲麿の漢詩を翻案したものなのではないかとの説がある。その有力候補が紀貫之(きのつらゆき)《歌035》である。その根拠とまでは言えないが、著書『土佐日記』のなかにはこの歌の初句を「青海原」と変えた歌が見える。 | The poet, when sixteen years of age, was sent with two others to China, to discover the secret of the Chinese calendar, and on the night before sailing for home his friends gave him a farewell banquet. It was a beautiful moonlight night, and after dinner he composed this verse. Another account, however, says that the Emperor of China, becoming suspicious, caused him to be invited to a dinner at the top of a high pagoda, and then had the stairs removed, in order that he might be left to die of hunger. Nakamaro is said to have bitten his hand and written this verse with his blood, after which he appears to have escaped and fled to Annam. Kasuga, pronounced Kasunga, is a famous temple at the foot of Mount Mikasa, near Nara, the poet’s home; the verse was written in the year 726, and the author died in 780. | |
安倍仲麿 | あべのなかまろ | NAKAMORO ABE |
仲麻呂とも。701~770年。中務大輔船守(なかつかさのだゆうふなもり)の子。養老元(717)年3月、吉備真備らと唐に渡る。唐名は朝衡(朝晃・ちょうこう)。左補闕(さほけつ)として玄宗(唐朝)に仕え、詩人の李白・王維・儲光儀らと親交。粛宗、代宗にも仕え安南都護もつとめた。在唐35年。天平勝宝3(753)年、遣唐使の藤原清河らと同行帰国しようとしたが遭難、ふたたび唐朝に仕え、宝亀元年正月、唐土に没した。
「古今集」に一首、「続拾遺集」に一首はいっている。 |
古今和歌集(こきんわかしゅう)
平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
──『日本史事典』
動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。
A…作品番号 number of the verse
B1…作者 poet
B2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002)
B3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down)
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.
右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.
余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。
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