009 |
古今・巻二
Kokin(waka)-shu, vol. 2 |
春
spring |
題知らず──小野小町
untitled | ||
花の色は
移りにけりな
いたづらに
吾身世にふる
ながめせしまに |
はなのいろは
うつりにけりな
いたずらに
わがみよにふる
ながめせしまに |
Hana no iro wa
Utsuri ni keri na
Itazura ni
Waga mi yo ni furu
Nagame seshi ma ni. |
桜の花の色は、はかなくあせてしまったことだなあ。長雨が降りつづく間に。同じように私の容姿も空しく衰えてしまった。もの思いにふけっている間に |
The blossom’s tint is washed away
By heavy showers of rain;
My charms, which once I prized so much,
Are also on the wane,
Both bloomed, alas! in vain. | |
花と美貌の寿命ははかなく短い
絶世の美女と伝えられる小野小町が、花の移ろいに自らの容色の衰えを重ね、嘆いている。
「花」がおもに桜を指すようになったのは『古今集』のころからで、それ以前は圧倒的に梅を指すことが多かった。この歌の場合も必ずしも桜とただし書きがされているわけではないが、盛りを迎える前に雨に打たれ空しく散ってしまう桜のはかないさまが、容姿の変化を嘆く美女を暗示するのにいかにもふさわしく、今日まで桜と解釈されているのにもうなずける。
「長雨」と「眺め」、「降る」と「経(ふ)る」のふたつの掛詞を巧みに使い、女の嘆きを間接的でありながらも、妖艶(ようえん)に表現している。雨の中、散りゆく桜をもの思いにふけりながら眺める小町の姿さえ浮かんできそうだ。 |
The writer was a famous poetess, who lived A.D. 834-880. She is remembered for her talent, her beauty, her pride, her love of luxury, her frailty, and her miserable old age. The magic of her art is said to have overcome a severe drought, from which the country suffered in the year 866, when prayers to the Gods had proved useless.
The first and last couplets may mean either ‘the blossom’s tint fades way under the continued downpour of rain in the world’, or ‘the beauty of this flower (i.e. herself) is fading away as I grow older and older in this life’; while the third line dividing the two couplets means, that the flower’s tint and her own beauty are alike only vanity. This verse, with its double meaning running throughout, is an excellent example of the characteristic Japanese play upon words. | |
小野小町 | おののこまち | KOMACHI ONO |
生没年・伝記未詳。出羽国(秋田県)の郡司小野良真(よしざね)の娘で、参議小野篁(たかむら)の孫と伝えられる。平安朝初期の女流歌人の第一人者。「古今集」第2期の歌人である。六歌仙および36歌仙の一人で、晩年は路傍に食を乞い諸国を漂泊したという。「古今集」に12首、勅撰集に62首。家集に「小町集」がある。 |
古今和歌集(こきんわかしゅう)
平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
──『日本史事典』
動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。
A…作品番号 number of the verse
B1…作者 poet
B2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002)
B3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down)
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.
右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.
余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。
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