2017年3月25日土曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #035


035
古今・巻一
Kokin(waka)-shu, vol.1
spring
初瀬に詣(まう)づるごとに宿りける人の家に、久しく宿らで、程へて後にいたれりければ、かの家の主人(あるじ)、「かく定かになむ宿りは在る」と言ひ出して侍(はべ)りければ、そこに立てりける梅の花を折りて詠める
when staying at someone’s for praying at Hatsuse, responding to the master’s word “quite a while since the last visit” with ume blossoms nearby
人はいさ
心も知らず
ふるさとは
花ぞ昔の
香ににほひける
ひとはいざ
こころもしらず
ふるさとは
はなぞむかしの
かににおいける
Hito wa iza
Kokoro mo shirazu
Furu sato wa
Hana zo mukashi no
Ka ni nioi keru.
あなたのお気持ちは、さあどうかわかりませんが、この古都奈良の地では、梅の花が昔と変わることなく香り、美しく咲いて迎えてくれますね
The village of my youth is gone,
New faces meet my gaze;
But still the blossoms at thy gate,
Whose perfume scents the ways,
Recall my childhood’s days.
梅の香りに呼び起こされる記憶
この歌には長い詞書(ことばがき)が付いている。それによると、作者が初瀬の長谷寺へ参詣した際に、昔なじみの宿へ寄り、そこの主人に最近足が遠のいていたことを咎められたので、梅の枝を手折り、添えて贈った歌である。
美しい梅の花と春の風景を回想し、人の心が移り変わることを対比させた構成が見事である。「人はいさ」と詠みだすところに多少の皮肉が感じられるが、そんなことも冗談のように言い合えるふたりの親密な関係がかいま見える。ちなみにこの歌に対する主人の返歌は「花だにもおなじ心に咲くものを植えたる人の心知らなむ」。主人は女性であったという説もあり、恋歌としても読める。
The writer of this verse, who lived A.D. 884-946, was a nobleman at Court, one of the greatest of the classical poets, and the first writer of Japanese prose. He was the chief compiler of the Kokinshiu, in which work he was assisted by the authors of verses Nos. 29, 30, and 33. This work consists of twenty volumes, containing some eleven hundred verses, and was completed in the year 922. It is related that Tsurayuki once visited a friend after a long absence; and on being asked jestingly by the latter, how he could remember the way after such a long interval of time, the poet broke off a spray of blossoms from a plum tree growing at the entrance, and presented it to his friend with this impromptu verse.
紀貫之 きのつらゆき TSURAYUKI KI
生没年未詳、一説に868945とある。望行(もちゆき)の子。延喜5(906)年御書所預(みふみどころあずかり)となり、この年に躬恒《歌029》、忠岑《歌030》、友則《歌033》らと勅撰歌集の第一集である「古今和歌集」の撰者に選ばれ、これまで漢文で書いていた例を破り、仮名まじり序文を書いた。のち土佐守在任中、任地で勅命により「新撰和歌集」を撰集した。帰途の記が「土佐日記」である。
36歌仙の一人。家集に「貫之集」。勅撰集には444首はいっており、これは定家《歌097》についで多い。「万葉集」の柿本人麿《歌003》とならぶ歌聖と称される。

古今和歌集(こきんわかしゅう)

平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





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