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後拾遺・巻十一
Go-shui(waka)-shu, vol.11 |
恋
love |
女に始(はじめ)て遣(つか)しける──藤原実方朝臣
sending to a woman for the first time | ||
かくとだに
えやはいぶきの
さしも草
さしも知らじな
燃ゆる思ひを |
かくとだに
えやはいぶきの
さしもぐさ
さしもしらじな
もゆるおもいを |
Kaku to dani
Eyawa Ibuki no
Sashi-mogusa
Sashimo shiraji na
Moyuru omoi o. |
これほど恋い慕っているとさえ言えないので、伊吹山のさしも草のように燃え上がる私の思いを、あなたはもよや知るよしもないでしょうね |
Though love, like blisters made from leaves
Grown on Mount Ibuki,
Torments me more than I can say,
My lady shall not see,
How she is paining me. | |
密かに思いが燃える初恋の歌
序詞、掛詞、縁語などを駆使し、非常に技巧を凝らした作品である。作者は恋歌を得意としていたようで、詞書(ことばがき)によるとこれは初恋の歌であるという。
同音を繰り返すことで流れるような響きを生み出すと同時に、さしも草(ヨモギ)で名高い伊吹山という歌枕から入り、お灸に用いるさしも草から燃える恋心を訴えるまでの連想も鎖のように連なって効果的である。 |
The writer lived some time at the close of the tenth century. The artemisia plant (or mugwart) is used in Japan for cauterizing; a conical wad of the leaves or blossoms is placed on the spot, lit at the top, and allowed to burn down to the skin; this produces a blister, and is extremely painful. Ibuki is a hill, between the Provinces of Omi and Mino, famous for its Artemisia, but ibuki can also stand for iu beki, which, in conjunction with e ya wa, would mean, ‘Ah! How could I tell her!’ But eyawa as one word means ‘indescribable!’ Notice also sashimo in the third and fourth lines; sashi-mogusa means ‘the artemisa plant’, but sashi mo means ‘even though it is smarting’; sashimo, in one word, can also mean ‘in such a way’. This verse is a very good example of the way the Japanese love to play upon words.
[The picture seems to show Mount Ibuki with the mugwart growing on it.] | |
藤原実方朝臣 | ふじわらのさねかたあそん | THE MINISTER SANEKATA FUJIWARA |
生年未詳。定時(さだとき)の子で、叔父済時(なりとき)の養子となる。一条天皇に仕え、寛和3(987)年に左近衛中将に任ぜられたが、藤原行成と争い、長徳(ちょうとく)元(995)年に陸奥守に左遷され、同4年任地で没した。
中古36歌仙の一人で「実方朝臣集」があり、「新古今集」「拾遺集」などに64首入首。 |
後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)
第4番目の勅撰集。藤原通俊(みちとし)撰。白河天皇の命で1086(応徳3)年に奏覧、改訂をへて87(寛治元)年に完成。「古今集」以来の仮名序をもち、四季6巻・賀・別・き旅・哀傷・恋4巻・雑6巻の20巻。歌数1218首。雑6に神祇歌と釈教歌をはじめて収録。主要歌人は和泉式部《歌056》(67首)、相模《歌065》(40首)、赤染衛門《歌059》(32首)、能因《歌069》(31首)、伊勢大輔《歌061》(27首)など。女流の進出が目立つ。源経信により勅撰集に対するはじめての論難「難後拾遺」が書かれた。
──『山川 日本史小辞典』
動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。
A…作品番号 number of the verse
B1…作者 poet
B2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002)
B3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down)
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.
右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.
余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。
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