2017年4月17日月曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #046


046
新古今・巻十一
Shin-Kokin(waka)-shu, vol.11
love
題不知──曾禰好忠
untitled
由良の門を
渡る舟人
かぢを絶え
行方も知らぬ
恋のみちかな
ゆらのとを
わたるふなびと
かじをたえ
ゆくえもしらぬ
こいのみちかな
Yura no to o
Wataru funabito
Kaji o tae
Yukue mo shiranu
Koi no michi kana.
由良の海峡を渡る船乗りが、櫂(かい)がなくなって、行く先も知らずに漂うように、先の私の恋だなあ
The fishing-boats are tossed about,
When stormy winds blow strong;
With rudder lost, how can they reach
The port for which they long?
So runs the old love-song.
ゆらゆらと漂いさすらうわが恋
先のわからぬ恋の行く末を、潮の流れが激しい海峡で櫂(舟を漕ぐ道具)がなくなって、波間に漂う不安定な舟の行方にたとえた。
自然の風景に心情を重ねる手法はよく見られるが、「櫂がなくなった舟」で不安なあてどもない感じを表現したのは見事である。序詞である上の句は比喩になっており、下の句の印象をより鮮明にしている。「かぢを」は「梶緒」で櫂をつないだ縄とする説もある。
作者の曾禰好忠は奇行が多いことで有名であった。円融院(えんゆういん)の子(ね)の日の御幸(みゆき)に、招待もされないのにみすぼらしい格好で現れ、歌詠みにかんしては私のほうがここにいる者たちより優れていると主張して、つまみ出された話は有名である。自尊心が強く、偏屈な性格から、社会的な地位に恵まれなかった。
作者の歌は斬新なものが多いが、性格が邪魔してこちらも当時は認められることがなかったようだ。
Nothing is known of the writer of this verse, but he is said to have lived in the tenth century. The meaning, not very clearly expressed in the translation, is that the course of true love is an uncertain as the course of the rudderless fishing-boats.
[In the illustration we see the fishing-boat tossing about on a rough sea and the rudder duly floating away astern.]
曾禰好忠 そねのよしただ YOSHITADA SONE
曽弥好忠(生没年未詳)。丹後掾(たんごのじょう)など地方の国司をつとめた。寛和元(985)年の正月に召されないのに円融院の「子(ね)の日の遊び」の歌人の座に列し、襟首(えりくび)をとって幕外に出された、という奇行が伝えられている。元日から大晦日までの日歌365首詠んだともいわれ、その中の「鳴けや鳴け蓬が杣(そま)のきりぎりす過ぎゆく秋はげにぞ悲しき」が代表作である。「曽丹集」という家集があり、中古36歌仙(和泉式部以下の平安朝歌人36人をいい、人麿以下の36歌仙とはことなる)の一人で、「拾遺集」「詞花集」「新古今集」などに89首入っている。

新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)

鎌倉初期、八代集最後の勅撰和歌集
略称『新古今集』。1205年完成。20巻。歌数約1980首。後鳥羽上皇《歌099》の命で藤原定家《歌097》、藤原家隆《歌098》、寂蓮《歌087》らが撰び、上皇の親撰。幽玄・妖艶・象徴的ないわゆる新古今調をつくり、万葉・古今とともに三大歌風をなす。本歌取り、体言止め、三句切れなどが特色。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





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