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後拾遺・巻十六
Go-shui(waka)-shu, vol.6 |
雑
other |
大納言行成物語などし侍けるに内の御物忌(ものいみ)にこもればとていそぎ帰りてつとめて鳥のこゑにもよほされてといひをこせて侍ければ夜深かりける鳥のこゑは函谷関のことにやといひつかはしたりを立ちかへりこれは逢坂の関に侍とあればよみ侍ける──清少納言
responding to Minister Yoshinari’s verse referring rooster’s voice, inquiring if that voice was the one at Kankokukan. | ||
夜をこめて
鳥の空音は
はかるとも
世に逢坂の
関はゆるさじ |
よをこめて
とりのそらねは
はかるとも
よにおうさかの
せきはゆるさじ |
Yo wo komete
Tori no sorene was
Hakaru tomo
Yo ni Ausaka no
Seki wa yurusaji. |
夜の明けないうちに、鶏の鳴き真似をして、函谷関(かんこくかん)はだませたとしても、逢坂の関はそうはいきません。私は決して逢いませんよ |
Too long to-night you’ve lingered here,
And, though you imitate
The crowing of a cock, ‘twill not
Unlock the tollbar gate;
Till daylight must you wait. | |
教養高きふたりの和歌のやりとり
この歌には長い詞書(ことばがき)がある。それによると、藤原行成(ふじわらのゆきなり)と作者は物語をしていたが、宮中の物忌(ものいみ)のために行成は夜中に帰った。明くる朝、「昨晩は鶏の声にせき立てられて帰ったが、名残惜しい」と文をよこしたので、清少納言は『史記』の故事をふまえ、「その声は、函谷関を開けたという、孟掌君(もうしょうくん)の鳴き真似の声か」と返した。すると「あなたに逢うという逢坂の関ですよ」といってきたので、この「夜をこめて~」の歌を贈ったというのである。『枕草子』に記された長いやりとりの一説に登場するのがこの歌で、さらに行成は「逢坂は人越えやすき関なれば鶏鳴かぬにもあけて待つとか」と戯れて返してきたと書かれている。
贈答歌ながら恋歌ではなく、知識人同士の機知を織り交ぜた言葉遊びの応酬といったところだろうか。ユーモアを含みながらも、きっぱりと逢うことを拒絶しているところに、しっかり者で明朗な清少納言の素顔がうかがえる。 | The Lady Sei, Sho-nagon being merely a title, was the daughter of the writer of verse No. 42, and the authoress of Makura-no-Soshi, or ‘A story book to keep under one’s pillow’; she was, with the writer of verse No. 57, one of the greatest of Japanese authors. She was a lady-in-waiting at Court, and ritired to a convent in the year 1000. This verse has reference to the Chinese story of Prince Tan Chu, who was shut up with his retainers in the town of Kankokkan; the city gates were closed from sunset to cockcrow, but during the night one of the Prince’s followers so successfully imitated the crowing of a cock, that the guards, thinking it was daybreak, opened the gates, and the fugitives escaped under cover of the darkness. It is related, that the Emperor once noticed Lady Sei admiring the freshly fallen snow, and asked ‘How is the snow of Koroho?’ She at once raised the window curtain, showing that she recognized the allusion to the verse ‘The snow of Koroho is seen by raising the curtain’. | |
清少納言 | せいしょうなごん | THE LADY SEI |
生没年未詳。清原元輔(きよはらのもとすけ)《歌042》の娘。祖父は清原深養父(きよはらのふかやぶ)《歌036》。一条天皇の皇后定子(ていし)に仕え、和漢の学に歌にみがきをかけた。橘則光と結婚したが失敗。晩年は尼になったともいわれる。
随筆「枕草子」の著者で、紫式部《歌057》とならび称される才女である。中古36歌仙の一人で「清少納言集」がある。「後拾遺集」などに勅撰歌15首。 |
後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)
第4番目の勅撰集。藤原通俊(みちとし)撰。白河天皇の命で1086(応徳3)年に奏覧、改訂をへて87(寛治元)年に完成。「古今集」以来の仮名序をもち、四季6巻・賀・別・き旅・哀傷・恋4巻・雑6巻の20巻。歌数1218首。雑6に神祇歌と釈教歌をはじめて収録。主要歌人は和泉式部《歌056》(67首)、相模《歌065》(40首)、赤染衛門《歌059》(32首)、能因《歌069》(31首)、伊勢大輔《歌061》(27首)など。女流の進出が目立つ。源経信により勅撰集に対するはじめての論難「難後拾遺」が書かれた。
──『山川 日本史小辞典』
動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。
A…作品番号 number of the verse
B1…作者 poet
B2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002)
B3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down)
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.
右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.
余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。
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