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拾遺・巻十四
Shui(waka)-shu, vol.14 |
恋
love |
入道摂政(兼家のこと)まがりたりけるに門(かど)をおそくあけければたちわづらひぬといひて入りて侍(はべり)ければ──右大将道綱母
responding to the husband saying tired of waiting to let in too long when he came too late | ||
歎きつつ
独り寝る夜の
明くる間は
いかに久しき
ものとかは知る |
なげきつつ
ひとりぬるよの
あくるまは
いかにひさしき
ものとかはしる |
Nageki-tsutsu
Hitori nuru yo no
Akuru ma wa
Ikani hisashiki
Mono to kawa shiru. |
あなたがお見えにならず、嘆きながら独り寝する夜の明けるまでの間が、どんなに長いものであるか、あなたはご存じでしょうか。きっとご存じないでしょうね |
All through the long and dreary night
I lie awake and moan;
How desolate my chamber feels,
How weary I have grown
Of being left alone! | |
浮気を糾弾する妻
久しぶりに夫の藤原兼家(ふじわらのかねいえ)が作者を訪れたとき、門をなかなか開けなったところ「待ち疲れた」といったので、詠んだ歌とされている。しかし、作者筆の『蜻蛉(かげろう)日記』によると、夫が別の女のところへ通い始めたのを知った作者が門を開けず、翌朝、しおれた菊とこの歌を贈った、という。
一夫多妻制のこの時代には夫の行動はごくありふれたものだったにちがいないが、断固として抗議する作者のプライドの高さがうかがえる。 |
This lady was the daughter of Motoyasu Fujiwara, and the wife of the Regent Kaneie; she was famous for her beauty, and lived in the reign of the Emperor Murakami (947-967). It is related, that her husband returned home late one night, and, having to wait a moment or two before she let him in, he angrily reproached her, and she replied with this verse (see illustration).
Yo no akuru ma means ‘until the dawn’, but akuru ma also suggests that he room is empty when he is away. | |
右大将道綱母 | うだいしょうみちつなのはは | THE MOTHER OF MICHITSUNA, COMMANDER OF THE RIGHT IMPERIAL GUARDS |
937~995。伊勢守倫寧(ともやす)の娘。天暦(てんりゃく)8(954)年、藤原兼家の側室となり、道綱を生んだ。
「蜻蛉日記」の作者で、本朝古今三大美人の一人と称された。中古36歌仙の一人で、「道綱母集」がる。「拾遺集」などに勅撰歌37首はいっている。 |
拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)
平安中期、第3番目の勅撰和歌集。八代集の1つ
1005~09年成立。20巻。歌数約1350首。撰者は花山院、藤原公任《歌055》の2説がある。風情が可憐で調べはしめやか。歌風としての優雅を完成した。集名は『古今和歌集』『後撰和歌集』にもれ遺(のこ)ったものを拾うの意による。
──『日本史事典』
動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。
A…作品番号 number of the verse
B1…作者 poet
B2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002)
B3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down)
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.
右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.
余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。
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