2017年5月14日日曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #057


057
新古今・巻十六
Shin-Kokin(waka)-shu, vol.16
other
はやくより童友(わらはとも)だちに侍りける人のとしごろへてゆきあひたるほのかにて七月十日のころ月にきほひ(競い)てかへり侍りければ──紫式部
when a friend from childhood has come after a long absence and rushed back like competing with the moon on around July 10th
めぐり逢ひて
見しやそれとも
分かぬ間に
雲隠れにし
夜半の月かな
めぐりあいて
みしやそれとも
わかぬまに
くもがくれにし
よわのつきかな
Meguri-aite
Mishi ya sore tomo
Wakanu ma ni
Kumo gakure nishi
Yowa no tsuki kana.
久しぶりにめぐりあって、その人かどうか見分けもつかないうちに、雲隠れした真夜中の月のように、たちまち去っていってしまったことだ
I wandered froth this moonlight night,
And some one hurried by;
But who it was I could not see,
Clouds driving o’er the sky
Obscured the moon on high.
あわただしく去っていった友を名残惜しむ
幼なじみとの久しぶりの再会もつかの間、まるで雲が月を隠すような早さで、友達は帰ってしまったと、残念に思っている。「見しやそれともわかぬまに」という誇張した表現が、楽しい時ほど早く過ぎてしまうことを物語っているようだ。
この歌は詞書に旧友との再会という説明があって、はじめて主題が明らかになる歌で、その意味では物語的要素が強い一首といえる。百人一首にはこのような説話を伴った歌が多く見られるが、紫式部に関してはとくに物語文学の頂点である『源氏物語』の作者という点を意識しての撰歌であろうか。
『源氏物語』は和歌の世界にも影響を与えた。平安時代の歌人には、和歌の手引書のようにも読まれ、藤原俊成(ふじわらしゅんぜい)は歌合の判詞の中で「源氏見ざる歌よみは遺恨のことなり」といったほどである。百人一首の中にも、『源氏物語』を背後にうかがわせる歌が多数ある。
This lady lost her mother when very young, and her father, the minister Toyonari Fujiwara, married again. Her skill at composing verses caused her stepmother to become jealous, and the latter treated her with great cruelty. She married Nobutaka, a nobleman, and the following verse was written by her daughter. She is famous in Japanese literature as the authoress of Genji Monogatari, a historical work in fifty-four sections, which she wrote in the monastery of Ishiyama, near Kyoto. She was one night taking a moonlight stroll on her verandah and caught sight of her lover; but, though she barely recognized him, the Kokinshiu, from which the verse is taken, adds that you are to understand that her reputation was over-shadowed from that moment, like the moon behind the clouds. She died in the year 992.
Sore tomo can mean either ‘though I glanced at him’, or else (wakanu, I did not recognize) ‘that friend’.
紫式部 むらさきしきぶ MURASAKI SHIKIBU
970から978頃に生まれ、1016ころ没。藤原為時(ためとき)の娘。藤原宣孝(のぶたか)の妻となる。大弐三位《歌058》の母。中宮彰子(しょうし)に仕えた。
不朽の大河小説「源氏物語」は、夫と死別してから書きはじめたもの。はじめ藤式部とよばれていたが、宮中(紫の上)のことを描いたので、紫式部と称されるようになったといわれる。
「紫式部日記」と「紫式部集」という家集があり、中古36歌仙の一人。勅撰歌は「後拾遺集」などに58首ある。

新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)

鎌倉初期、八代集最後の勅撰和歌集
略称『新古今集』。1205年完成。20巻。歌数約1980首。後鳥羽上皇《歌099》の命で藤原定家《歌097》、藤原家隆《歌098》、寂蓮《歌087》らが撰び、上皇の親撰。幽玄・妖艶・象徴的ないわゆる新古今調をつくり、万葉・古今とともに三大歌風をなす。本歌取り、体言止め、三句切れなどが特色。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。







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