2017年6月24日土曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #074


074
千載・巻十二
Senzai(waka)-shu, vol.12
love
権中納言俊忠家に恋の十首詠み侍ける時祈れどもあはぬ恋と云へる心をよめる──源としより朝臣
presenting 10 verses to Minister Tadaie, a verse of non-fulfilling love even praying to gods.
憂かりける
人を初瀬の
山おろしよ
はげしかれとは
祈らぬものを
うかりける
ひとをはつせの
やまおろしよ
はげしかれとは
いのらぬものを
Ukari keru
Hito o Hatsuse no
Yama-oroshi yo
Hageshikare to wa
Inoranu mono o.
私につれなかった人が、なびくようにと初瀬の観音様に祈ったのに。初瀬の山おろしよ、あの人がいっそうつれなくなるようにとは祈らなかったのに
Oh! Kwannon, Patron of this hill,
The maid, for whom I pine,
Is obstinate and wayward, like
The gusts around thy shrine.
What of those prayers of mine?
冬の風にさらされる哀れな恋の敗者
初瀬にある長谷寺は観音信仰の霊場として、多くの人々が参拝した場所であった。とくに十二面観音に祈る女性は多く、『蜻蛉(かげろう)日記』や『更級(さらしな)日記』にも登場する。そんな背景から、長谷寺は恋の願掛けをする寺としても有名であった。
同じように、つれない人の態度が変わるようにと観音に祈った作者は、時を経て、同じ場所で、吹きすさぶ風に身を震わせながら訴える。あの人はこの風のようにより冷淡になった。なぜですか。そんなふうには祈らなかったのに。
一首のなかに以前に参拝したときから現在までの時間の経過を詠み込み、擬人化した山おろしを冷たい態度にたとえて、効果的に用いている。詞書(ことばがき)によると藤原俊忠(ふじわらのとしただ)の家で「祈れども逢はざる恋」の詠題のもとに詠んだものだが、巧みな情景描写、心理描写から、真実味のある言いしれない悲しさが胸に迫ってくる一首である。
Toshiyori is supposed to have been the son of the writer of verse No. 71; he probably lived early in the twelfth century. Hatsuse is a mountain village near Nara, in the Province of Yamato; the temple there is dedicated to Kwannon, Goddess of Mercy, ‘who looketh for ever down above the sound of prayer.’
源俊頼朝臣 みなもとのよしよりあそん THE MINISTER TOSHIYORI MINAMOTO
10551129。《歌71》の作者経信(つねのぶ)の三男。俊恵(しゅんえ)《歌085》の父。左近衛少将(さこんへのしょうしょう)を経て木工権頭(もくごんのかみ)となる。
歌壇に新風を起こした当代の代表的歌人で、仏教の香りがする歌が多い。白河法皇の命をうけて「金葉和歌集(きんようわかしゅう)」を撰し、歌論書「俊頼髄脳」がる。家集に「散木奇歌集」があり、中古36歌仙の一人で「金葉集」などに201首ある。

千載和歌集(せんざいわかしゅう)

鎌倉前期、第7番目の勅撰和歌集。八代集のひとつ
1187年完成。20巻。歌数約1200首。後白河法皇の命で藤原俊成《歌083》が撰した。『金葉和歌集』『詞花和歌集』両集の新奇の風を否定し、古今的伝統への復帰を志し、清新な感覚に支えられた感傷的情緒性が目だつ。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





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