2017年6月11日日曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #069


069
後拾遺・巻五
Go-shui(waka)-shu, vol.5
autumn
永承四年内裏歌合によめる──能因法師
at an imperial verse competition in the year 4 of Eijo era.
嵐吹く
三室の山の
もみぢ葉は
竜田の川の
錦なりけり
あらしふく
みむろのやまの
もみじばは
たつたのかわの
にしきなりけり
Arashi fuku
Mimuro no yama no
Momiji-ba wa
Tatsuta no kawa no
Nishiki nari keri
嵐が吹き散らす三室山のもみじ葉は、龍田川の川面を彩って、錦織のような見事な風景になることだよ
The storms, which round Mount Mimuro
Are wont to howl and scream,
Have thickly scattered maple leaves
Upon Tatsuta’s stream;
Like red brocade they seem.
絢爛豪華な紅葉の絵巻
三室山と龍田川という、いずれも紅葉の名所である歌枕を両方詠み込んで、山から川へ、散って川面に落ちる葉を追うような視点の移動を促している点が見事である。また、歌学に熱心で、とくに歌枕に高い関心を持ち、『能因歌枕』という書物まで残している作者らしい歌でもある。
鮮やかな景が目に浮かぶ一首であるが、歌合で詠まれたもので、実景を詠ったものではない。そもそも、三室山のもみじが龍田川に浮かぶことなど地理的に考えにくいと批判されることもあるが、歌合の場においては、虚構であるからこその、これ以上ないほどの華やかさが好まれたのであろう。
古くから定着した歌枕と紅葉を錦にたとえる表現は、古典的ともいえるが、散る葉(動)と浮かぶ葉(静)の対比、山から川への瞬間的な場所の移動など、その視点は新しいものだろう。そう考えると、定家が『近代秀歌』で唱えた「詞は古きをしたひ、心は新しきを求め」という歌論に添う歌ではないだろうか。
The poet’s lay name was Nagayasu Tachibana; he was the son of Motoyasu Tachibana, the Governor of the Province of Hizen. Mount Mimuro and the Tatsuta River are both in the Province of Yamato, not far from Nara.
[The picture is not very clear, but the river is plainly depicted, and maple leaves are scattered all around.]
能因法師 のういんほうし THE PRIEST NOIN
生没年未詳、一説には9881050。俗名は橘永愷(ながやす)。肥後守元愷の子(養子という説も)。文章生(もんじょうしょう)となり、肥後進士(ひごしんじ)と呼ばれたが30歳ごろに出家した。法名は融円で、住地の古曽部入道(こそべにゅうどう)とも呼ばれ、のち能因と改めた。
漂泊の旅で歌を詠み、中古36歌仙の一人で「歌枕」などの著があり、「能因法師集」がある。「後拾遺集」などに勅撰歌67首入首。

後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)

第4番目の勅撰集。藤原通俊(みちとし)撰。白河天皇の命で1086(応徳3)年に奏覧、改訂をへて87(寛治元)年に完成。「古今集」以来の仮名序をもち、四季6巻・賀・別・き旅・哀傷・恋4巻・雑6巻の20巻。歌数1218首。雑6に神祇歌と釈教歌をはじめて収録。主要歌人は和泉式部《歌056》(67首)、相模《歌065》(40首)、赤染衛門《歌059》(32首)、能因《歌069》(31首)、伊勢大輔《歌061》(27首)など。女流の進出が目立つ。源経信により勅撰集に対するはじめての論難「難後拾遺」が書かれた。
 ──『山川 日本史小辞典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。






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