2016年7月21日木曜日

黄昏の世界遺産 12

ヴェネツィアの夕陽 Sunset on Venice


1000年に渡る輝かしい繁栄を遂げた「地中海の女王」とたたえられる街、ヴェネツィア。
15世紀に貿易の中継地として繁栄の絶頂期を迎えました。
その頃、多くの芸術家が集まり、絵画の分野ではヴェネツィア派が興り、17世紀にはオペラなどバロック音楽の中心地となりました。
現在では、宝石、工芸品の製造、繊維工業が盛んで、ヴェネツィア・ガラスと呼ばれるガラス工芸も有名ですね。

街を貫く大運河「カナル・グランデ」の両側には繁栄を支えた「ベニスの商人」たちの館が並んでいます。
ヴェネツィアで最も有名な場所、サン・マルコ広場は、かのナポレオンが「世界一美しい広場」とたたえたといわれています。

水上に浮かぶ美しい街の夕景をDOVA-SYNDROME さん(http://dova-s.jp/)の音楽に乗せてお送りします。

では、この世界遺産の詳細を見ることにしましょうか。



ヴェネツィアとその潟《イタリア》
Venice and its Lagoon《Italy》

http://whc.unesco.org/en/list/394

登録種別:文化遺産
登録基準:(i) 人類の創造的天才の傑作を表現するもの;(ii) ある期間を通じて、または、ある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、町並み計画、景観デザインの発展に監視、人類の価値の重要な交流を示すもの;(iii) 現存する、または、消滅した文化的伝統、または、文明の、唯一の、または、少なくとも稀な証拠となるもの;(iv) 人類の歴史上重要な時代を例証する、ある形式の建造物、建築物群、技術の集積、または、景観の顕著な例;(v) 特に、回復困難な変化の影響下で損傷されやすい状態にある場合における、ある文化(または、複数の文化)或は、環境と人間との相互作用を代表する伝統的集落、または、土地利用の顕著な例;(vi) 顕著な普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰、または、芸術的、文学的作品と、直接に、または明白に関連するもの
登録年:1987

ヴェネツィアは、イタリア北東部のヴェネト州にある。ヴェネツィアは、アドリア海の118の州の上に造られた水の都で、176の運河と400余の橋で島を結んでいる。9世紀には聖マルコの遺体がエジプトから移されると発展しはじめ、15~16世紀には、胡椒などの香辛料、絹、銀などの貿易で強国を築き、東西文明の結接点となった。大運河(カナレ・グランデ)の入口にあるサン・マルコ広場には、高さが100m近い鐘楼、ビザンチン、ゴシック、ルネッサンスなどの様式が混在した大理石のサン・マルコ大聖堂、それに、ドゥカーレ宮殿が、また、潟の岬の部分には、バロック様式の傑作といわれるサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会がある。ヴェネツィアでは、海面上昇や地盤沈下等が原因で、満潮時に冠水することが多くなっており、問題が深刻化しつつある。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)

2016年7月20日水曜日

黄昏の世界遺産 11

スコータイの夕陽 Sunset on Sukhothai


タイ族による最初の王朝、「幸せの夜明け」という意味を持つ仏教王国、スコータイ。
王国の誕生は13世紀初頭、仏教を取り入れ、独自の文化を築きました。

スコータイ最大の遺跡、王宮寺院ワット・マハタート。
遺跡の残る森の中には、およそ100体にのぼる仏像が、整然と並んでいます。
その中でも最も大きな仏像がアチャナ仏で、高さは14.7m。
アチャナとは、タイ語で「恐れない者」という意味です。

音楽は全編にわたり表示してあるとおり、Ben Tissot 氏(Bensound.com)の「Slow Motion」という曲です。

この世界遺産の詳細は以下のとおりです。



古都スコータイと周辺の歴史地区《タイ》
Historic Town of Sukhothai and Associated Historic Towns《Thailand》

http://whc.unesco.org/sites/574.htm

登録種別:文化遺産
登録基準:(i) 人類の創造的天才の傑作を表現するもの;(iii) 現存する、または、消滅した文化的伝統、または、文明の、唯一の、または、少なくとも稀な証拠となるもの
登録年:1991

古都スコータイは、首都バンコクの北部約447km、ビッサヌロークの西約60kmにある。古都スコータイは、タイ族最古のスコータイ王朝(1238~1438年)の都跡。スコータイという言葉は、「幸せの夜明け」を意味する。東西1.8km、南北1.6kmの城壁と三重の塀に囲まれた都城には、見る場所、角度によって、実に様々な表情を見せる古都スコータイの中心を占めるワット・マハタートをはじめ、静寂の中に大きな仏像が鎮座するワット・スィー・チュム、トウモロコシを直立させた様な塔堂が並ぶワット・スィー・サワイ、その優雅さはスコータイ随一といわれるワット・サー・スィーなどの多くの寺院、クメール文字を改良しタイ文字を創出した第3代ラムカムヘーン王の王宮遺跡が残る。スコータイ美術は、小乗仏教を移入したスリランカの影響が色濃い。ラムカムヘーン国立博物館では、発掘された仏像など数々の遺物をじっくり鑑賞することができる。尚、ラムカムヘーン王の碑文は、世界記憶遺産に登録されており、タイ国立博物館(バンコク)に収蔵されている。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)

2016年7月19日火曜日

黄昏の世界遺産 10

ギザのピラミッドの夕陽 Sunset on Pyramids in Giza



ナイル川下流域に広がる肥沃な大地に花開いた古代エジプト文明、その象徴、ギザのピラミッド。

ナイル川の河口から200kmに位置するエジプトの首都、カイロ。
西側の対岸にはギザの街があり、世界遺産の中でも最も深い謎に包まれた遺跡、ギザの三大ピラミッドがそびえています。

ナイル川流域には、他にもおよそ100以上のピラミッドがあります。

音楽は DOVA-SYNDROME (http://dova-s.jp/)。

この世界遺産の詳細を記しておきますね。



メンフィスとそのネクロポリス/ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯《エジプト》
Memphis and its Necropolis --- the Pyramid Fields from Giza to Dahshur《Egypt》

http://whc.unesco.org/sites/86.htm

登録種別:文化遺産
登録基準:(i) 人類の創造的天才の傑作を表現するもの;(iii) 現存する、または、消滅した文化的伝統、または、文明の、唯一の、または、少なくとも稀な証拠となるもの;(vi) 顕著な普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰、または、芸術的、文学的作品と、直接に、または明白に関連するもの
登録年:1979

メンフィスとそのネクロポリス/ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯は、古代文明発祥の地であるエジプトの首都カイロ近郊のナイル川西岸に展開する。その構成資産は、メンフィスとそのネクロポリス(ミートラヒーナ、サッカラ、アブシール、ダハシュール)とギザのピラミッド群からなる。カイロの南25kmにある古王国時代(紀元前2700~2200年)のメンフィスを中心に、約80のピラミッド群がギザからダハシュール~メイドゥームに集中している。ギザのクフ王、カフラー王、メンカウラー王の三大ピラミッドは、オリオン座の3つの星に対応した位置関係にあるとされ、最大のクフ王のピラミッドは、高さが137m(創建時の高さは146m)、底辺が230mの正四角錘形で、平均2.5トン、約230万個の石が使用されている。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)

2016年7月18日月曜日

黄昏の世界遺産 9

パルミュラの夕陽 Sunset on Palmyra


ユーラシア大陸を東西に貫くシルクロード、かつては貿易の拠点として栄華を極めたのがパルミュラ。
街の別名はタドモル Tadmor、聖書に記載があるのはこちらです。
歴史と共に砂漠に埋もれた古代都市。

街並みはギリシャやローマの文化を取り入れた石造りの建築と、ペルシャなど東洋の文化を取り入れた様式で築かれました。
東西両文明の影響を物語るつくりになっています。

現存する遺跡のひとつ、パルミュラの神々が奉られていたベル神殿は、かつて金箔やレリーフなどで綺麗に飾られていたそうです。
ローマ皇帝ハドリアヌスをたたえた記念門から街の中心部を1200mに渡って真っ直ぐに伸びる道もあり、両側に建ち並んでいた列柱はおよそ750本にものぼりました。
ローマ様式の大劇場は、2000人以上の客席が設けられています。

音楽は全編にわたり表示してあるとおり、Ben Tissot 氏(Bensound.com)の「Slow Motion」という曲です。

この世界遺産の詳細を記しておきますね。



パルミラの遺跡《シリア》
Site of Palmyra《Syria》

http://whc.unesco.org/sites/23.htm

登録種別:文化遺産
登録基準:(i) 人類の創造的天才の傑作を表現するもの;(ii) ある期間を通じて、または、ある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、町並み計画、景観デザインの発展に監視、人類の価値の重要な交流を示すもの;(iv) 人類の歴史上重要な時代を例証する、ある形式の建造物、建築物群、技術の集積、または、景観の顕著な例
登録年:1980・2013【危険遺産】

パルミラの遺跡は、ダマスカスの北東200km、シリア砂漠の中央にある。パルミラは、西方と東方の結節点として、そして、シルクロードの中継地としての隊商都市としても、なかでも、ローマ時代の1~3世紀には、交易路の要所として栄えた。パルミラという名前は、ナツメ椰子を意味するパルマに由来する。起源は聖書にもある程古いが、パルミラのゼノビア女王がローマ帝国から独立を謀ったことによりローマ軍に破壊され廃墟となった。アラブの城塞、凱旋門、広場、列柱道路、コリント様式の列柱廊があるベール神殿、葬祭殿、元老院、墓地などが往時の繁栄を偲ばせる。2013年の第37回世界遺産委員会プノンペン会議で、国家の内戦状況が直面する危険への注意を喚起するために、「危機にさらされている世界遺産リスト」に登録された。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)


「パルミラ」「パルミュラ」どちらの表記も見られ、音の響きが好みなので「パルミュラ」を選びました。

2016年7月17日日曜日

黄昏の世界遺産 8

モン・サン・ミシェルの夕陽 Sunset on Mont-Saint-Michel


広大な干潟の海に浮かぶカトリックの修道院、モン・サン・ミシェル。
その神秘的な景観から「海上のピラミッド」とうたわれます。
付近の海域は潮位の差が大きく、かつては満潮時には陸の孤島と化したようです。

夢に現われた天使のお告げできたといわれる、美しく祈りに満ちた「奇蹟の島」。
8世紀の着工からおよそ800年の歳月をかけて現在の姿になりました。
混在する建築様式の中でも、ゴシック様式の回廊は特に有名です。

巡礼者や観光客なども多く、名物のオムレツと羊のステーキを出す店もたくさんあります。

この神に捧げられた祈りの館のバックに流れるのはDOVA-SYNDROME さん (http://dova-s.jp/) のメロディーです。

この世界遺産の詳細を見てみましょう。


モン・サン・ミッシェルとその湾《フランス》
Mont-Saint-Michel and its Bay《France》

http://whc.unesco.org/sites/80.htm

登録種別:文化遺産
登録基準:(i) 人類の創造的天才の傑作を表現するもの;(iii) 現存する、または、消滅した文化的伝統、または、文明の、唯一の、または、少なくとも稀な証拠となるもの;(vi) 顕著な普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰、または、芸術的、文学的作品と、直接に、または明白に関連するもの
登録年:1979・2007

モン・サン・ミッシェルは、フランス北西部、ノルマンディー半島のつけ根、モン・サン・ミッシェル湾にある全周約900mの小島にある修道院。709年司教オヴェールの夢に聖ミカエルが現われ、大天使を奉る聖堂建築を命じた。その命に従い、建築が開始され、難工事の末、16世紀に完成した。14世紀には、英仏百年戦争の戦火の渦に巻き込まれ、修道院の周囲に城壁や塔を築いて要塞化されていった。ロマネスク、ゴシック、ルネッサンス様式が併存。干潟に築かれた堤防で、陸と繋がる奇岩城。19世紀になって防波堤が築かれ、安全に島に渡れるようになった。現在は、ベネディクト派の修道院として使われており、今でも祈りをささげる修道士の姿が見られる。年間250万人もの人が訪れる観光地でもある。急激な陸地化により、かつての景観が失われたとして、2009年から岸との間の道路を取り壊し、新たな橋を架ける工事を行い、2014年7月に完成した。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)

2016年7月16日土曜日

黄昏の世界遺産 7

カトマンズ盆地の夕陽 Sunset on Katmandu Valley


8000m級の山々が連なり、世界最高峰のエベレストがあるヒマラヤ山脈。
その麓にあるのが、カトマンズ盆地。
カトマンズ、パタン、バクタプルという3つの古都があります。
「人より多くの神が住む」といわれており、街にはおよそ500もの寺院があり、日々人々が祈りを捧げています。
ヒンドゥー教と仏教が共存してともに信仰を集める、世界でも珍しいところです。

ネパール最大のヒンドゥー教寺院、パシュパティナートはカトマンズにあります。。
この寺院はシヴァ神を奉るヒンドゥー教の聖地となっています。

カトマンズの中心部から3kmほど離れた丘の上に建つチベット仏教寺院、スワヤンブナートは、およそ2000年前に建てられたといわれています。

音楽は全編にわたり表示してあるとおり、Ben Tissot 氏(Bensound.com)の「Slow Motion」という曲です。

この世界遺産の詳細を見てみましょう。



カトマンズ渓谷《ネパール》
Kathmandu Valley《Nepal》

http://whc.unesco.org/sites/121.htm

登録種別:文化遺産
登録基準:(iii) 現存する、または、消滅した文化的伝統、または、文明の、唯一の、または、少なくとも稀な証拠となるもの;(iv) 人類の歴史上重要な時代を例証する、ある形式の建造物、建築物群、技術の集積、または、景観の顕著な例;(vi) 顕著な普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰、または、芸術的、文学的作品と、直接に、または明白に関連するもの
登録年:1979・2006

カトマンズ渓谷は、ヒマラヤ山脈の南、標高1300mの盆地にあるカトマンズ市、バクタブル(バドガオン)市、ラリトプル(パタン)市にまたがる。先住民のネワール人による13~18世紀のマッラ王朝の時代に、パタンとバドガオンの2王朝とも共存し、仏教とヒンドゥー教が融合したネワール文化を開花させた。カトマンズ旧市街のダルハール広場にあるマッラ、パタン、バドガオンの3王朝の王宮をはじめ、銀の扉の優美な建築で有名なシヴァ神の寺院であるパシュパティナート寺院、323年にハリ・ドゥッダ王によって建てられたチャング・ナラヤン寺院、世界で最も壮麗な仏塔の一つであるスワヤンブーナートなどの遺跡が数多く残っている。人口増加が、世界遺産の保護や周囲の景観に重要な影響を及ぼしている。日本政府もカトマンズ渓谷の文化遺産の保存修復には、官民をあげて、資金面、技術面等で長年協力している。2003年には危機遺産リストに登録されたが、保護管理状況が改善されたため、2007年に危機リストから解除された。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)


Katmanduと綴るのが一般的ですが、KathmanduやKhatmanduと綴られる場合もあるようですね。

個人的に、渓谷という言葉は「山にはさまれた川のある所」とのイメージが強いのですが、「谷間」という意味もあり、盆地を指すものと解釈しました。
なので、原文に手を加えずそのまま記載させていただきました。
たしかに英語のvalleyを訳すと渓谷になってしまうのも肯けます。
盆地もvalleyですが。

2016年7月15日金曜日

黄昏の世界遺産 6

イグアスの滝の夕陽 Sunset on Iguassu Falls


アルゼンチンとブラジルの国境にあるイグアス国立公園。
ここに大小およそ270の滝が集まるイグアスの滝があります。
最も落差のあるこの滝は、およそ80mにも及び、「悪魔ののど笛」と呼ばれています。
イグアスとは先住民の言葉で「壮大な水」という意味。
流れ落ちる水量は平均で毎秒およそ1750立方mと世界最大級の規模です。

巨大な滝の巻き上げる水しぶきに虹のカーテンがかかり、幻想的な風景が現われました。
壮大な滝は見る人を圧倒します。

大地を切り裂くような大量の水にかかる夕陽のBGMは、DOVA-SYNDROME さん(http://dova-s.jp/)です。

この世界遺産の詳細を記しておきますね。



イグアス国立公園《アルゼンチン/ブラジル》
Iguazu National Park《Argentina》/Iguacu National Park《Brazil》

http://whc.unesco.org/sites/303.htm(アルゼンチン)
http://whc.unesco.org/sites/355.htm(ブラジル)

登録種別:自然遺産
登録基準:(vii) もっともすばらしい自然的現象、または、ひときわすぐれた自然美をもつ地域、及び、美的な重要性を含むもの;(x) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの〔科学上、または、保全上の観点から、すぐれて普遍的価値をもつ絶滅の恐れのある主が存在するものを含む〕
登録年:1984(アルゼンチン)・1986(ブラジル)

イグアス国立公園は、南米のアルゼンチンとブラジル二国にまたがる総面積4,920,000平方kmの広大な森林保護区で、金色の魚ドラド、豹、鹿、小鳥、昆虫や蘭、草花など多様な動植物が生息している。なかでも、国立公園内にある総滝幅4km、最大落差約85mの世界最大級のスケールと美しさを誇るイグアスの滝は世界的にも有名。イグアスとは、「偉大な水」の意味で、滝の数は大小合わせて300以上、大瀑布が大音響と共に繰り広げる豪壮な水煙のパノラマは圧巻で、しばしば、空には美しい虹がかかる。川の中央でアルゼンチン側ミシオネス州ととブラジル側パラナ州にわかれ、それぞれが登録時期も異なる為に、二つの物件として世界遺産に登録されている。ブラジル側の登録遺産(登録面積170,086ha)は、無計画な公園を分断する道路建設による遺産への脅威から1999年に危機遺産に登録されたが、2001年に解除された。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)

2016年7月13日水曜日

黄昏の世界遺産 5

グランド・キャニオンの夕陽 Sunset on Grand Canyon



赤茶けた大地と切り立った断崖、先住民には聖地と崇められ、冒険者たちからは「魔の谷」と恐れられた、グランド・キャニオンは、アメリカ南西部、アリゾナ州北部におよそ450kmにわたって広がる、世界最大の渓谷です。
コロラド川の急流がおよそ1億年の時をかけ、平原を侵食することで、このような景観が生まれました。
川に削られて現われた地層は、およそ20億年前のものだといわれています。

グランド・キャニオン国立公園の入り口付近、デザートビューにある展望台からは、大自然の造る雄大な姿を見渡すことができます。

地球の歴史を刻む大地に沈む夕陽のBGMは、Ben Tissot 氏作曲「Slow Motion」(Bensound.com)。

では、この世界遺産の詳細を見ることにしましょうか。



グランド・キャニオン国立公園《アメリカ》
Grand Canyon National Park《The United States》

http://whc.unesco.org/sites/75.htm

登録種別:自然遺産
登録基準:(vii) もっともすばらしい自然的現象、または、ひときわすぐれた自然美をもつ地域、及び、美的な重要性を含むもの;(viii) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの〔生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、或は重要な地形的、または、自然地理的特性などを含む〕;(ix) 陸上、淡水、沿岸、及び、海洋生態系と動植物群集の進化と発達において、進行しつつある重要な生物学的、生理学的プロセスを示す顕著な見本であるもの:(x) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの〔科学上、または、保全上の観点から、すぐれて普遍的価値をもつ絶滅の恐れのある主が存在するものを含む〕
登録年:1979

グランド・キャニオン国立公園は、アリゾナ州北西部のココニノ郡とモハーヴェ郡にまたがる。コロラド川がコロラド高原の一部であるカイバブ高原とココニノ高原を侵食して形成したマーブル峡谷からグランド・ウォッシュ崖までの長さ450km、最大幅30km、深さ1,500mの壮大な大峡谷。世界遺産の登録面積は、493,077haである。全体的には赤茶けて見えるが日の出と日の入りの景色は荘厳で美しい。断崖絶壁の谷底を流れるコロラド川の両岸の約1億年前に隆起した地層は最古層で20億年前の先カンブリア紀、表層部で2.5億年前の二畳紀のものといわれる。貝類の化石から太古に海底であったことがわかる。紀元前500年頃から農耕を営んでいた先住民族の居住跡も見られる。大空を悠々と弧を描くイヌワシ、オオタカ、ハヤブサの雄姿が印象的。グランド・キャニオンは、1540年にスペインのカルデナス隊が発見した。また、グランド・キャニオンは、アメリカの大自然の象徴であり、世界七不思議の一つとしても有名。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)

2016年7月12日火曜日

黄昏の世界遺産 4

イースター島の夕陽 Sunset on Easter Island



南太平洋に浮かぶ孤島、そこに残る謎の石像モアイ像がたたずむ、チリ、イースター島。

南米チリの沖合いからおよそ3800kmにあるイースター島。
現地の言葉でラパ・ヌイ「大きな島」と呼ばれています。
テピトオテヘヌア Te PIto o te Henua(世界のへそ)とも呼ばるそうです。

この島には800体を越える巨大な石像モアイがあります。
モアイは、島に住んだ人々が部族の先祖を祭ったもので、「アフ」と呼ばれる祭壇の上に立てられています。

島の東部にある、ラノ・ララク火山です。
モアイは山をそのまま削りだしてつくられました。
モアイ像は現在でも多くの謎に包まれています。

神秘のヴェールに包まれたモアイ像を照らす夕陽、DOVA-SYNDROME (http://dova-s.jp/)さんの音楽でお届けします。

この世界遺産の詳細を見てみましょう。






ラパ・ヌイ国立公園《チリ》
Rapa Nui National Park《Chile》

http://whc.unesco.org/sites/715.htm

登録種別:文化遺産
登録基準:
(i) 人類の創造的天才の傑作を表現するもの;(iii) 現存する、または、消滅した文化的伝統、または、文明の、唯一の、または、少なくとも稀な証拠となるもの;(v) 特に、回復困難な変化の影響下で損傷されやすい状態にある場合における、ある文化(または、複数の文化)或は、環境と人間との相互作用を代表する伝統的集落、または、土地利用の顕著な例
登録年:1995

ラパ・ヌイ国立公園は、チリの首都サンチアゴから西へ3,760km、タヒチから東へ4,050kmの南太平洋上の火山島のイースター島(公式名:パスクア島)にあり、1935年に国立公園に指定された。ラパ・ヌイとは、現地語で「大きな島」という意味。入植は、4世紀頃と推定され、原住民はポリネシアのマルケサス島から移住したといわれている。その後、オランダ人の探検家によってこの島が発見されるまでの1300年間、この島は殆ど孤立状態にありながら、驚くべき複雑な文化を発展させた。不可思議な凝灰岩の巨石像モアイ、大きな石の祭壇アウ、鳥人の儀式村、墓や火葬場、住居跡、石で内壁を縁どった洞窟、洞窟の壁画や岩絵等、モアイが切り出された石切り場、武器や道具などは、ラパ・ヌイ文化の所産である。なかでも、海岸沿いに立つモアイの石像は有名。10~16世紀にかけて、各部族または血族の神化された先祖を村の守り神として、モアイと呼ぶ創造性豊かな石像を残した。しかし、16~17世紀に部族間で内戦が次々と起こり、敵である部族を守っていたモアイ倒し闘争(フリ・モアイ)によって多くが破壊された。現在島内に残るモアイは約1,000体とされているが、その大半はうつ伏せに倒れたまま放置され、岩塊と化している。イースター島は、孤立が故に造り得た謎と神秘に満ちたユニークな文化的背景を現在も残している。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)

2016年7月11日月曜日

黄昏の世界遺産 3

ドレスデンの夕陽 Sunset on Dresden


バロック様式の建物が建ち並ぶ美しい街並み、文豪ゲーテが「エルベ川のフィレンツェ」とその美しさをたたえたのがドイツ、ドレスデン。
残念ながら世界遺産からの登録抹消となってしまいました。

ドレスデンは、ドイツの東部、チェコとの国境からおよそ30kmほどにある歴史ある街。
ヨーロッパを東西に分けるエルベ川が街の中を流れています。

12世紀末からザクセン選帝侯(せんていこう)の宮廷都市として栄えました。
街には宮殿や古城、教会などが建ち並び、昔の栄華を忍ばせます。

ツビンガー宮殿は、18世紀にフリードリヒ・アウグスト1世の命により建てられました。
ここにはヨーロッパ中の絵画や財宝が集められました。

街の中心にあるオペラハウス、かつてワーグナーが楽団長を務めたことで知られるゼンパーオーパーです。

街のシンボル、聖母教会は、ヨーロッパで最も大きなプロテスタントの教会です。

エルベ川のほとりに広がる美しい風景と歴史を感じさせる街並みが人々の心をとらえる。「芸術の都」を染める夕陽、Ben Tissot 氏 (Bensound.com) の音楽「Slow Motion」でどうぞ。

世界遺産に登録されていたときの詳細を記しておきますね。






ドレスデンのエルベ渓谷《ドイツ》
Dresden Elbe Valley《Germany》

登録種別:文化遺産
登録基準:(ii) ある期間を通じて、または、ある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、町並み計画、景観デザインの発展に監視、人類の価値の重要な交流を示すもの;(iii) 現存する、または、消滅した文化的伝統、または、文明の、唯一の、または、少なくとも稀な証拠となるもの;(iv) 人類の歴史上重要な時代を例証する、ある形式の建造物、建築物群、技術の集積、または、景観の顕著な例;(v) 特に、回復困難な変化の影響下で損傷されやすい状態にある場合における、ある文化(または、複数の文化)或は、環境と人間との相互作用を代表する伝統的集落、または、土地利用の顕著な例
登録年:2004・2006【危機遺産】
※2009年世界遺産リストからの抹消

ドレスデンのエルベ渓谷は、ザクセン州の州都ドレスデンを中心に、北西部のユービガウ城とオストラゲヘーデ・フェルトから南東部のビルニッツ宮殿とエルベ川島までの18kmのエルベ川流域に展開する。このエルベ渓谷には、18~19世紀の文化的景観が残る。ドレスデンは、かつてのザクセン王国の首都で、エルベのフィレンツェと称えられ、豪華な宮廷文化が輝くバロックの町で、16~20世紀の建築物や公園などが残っている。なかでも19~20世紀の産業革命ゆかりの鉄橋、鉄道、世界最古の蒸気外輪船、それに造船所は今も使われている。2006年、ドレスデン建都800年の記念すべき年であったが、エルベ川の架橋計画による文化的定款の完全性の損失を理由に、「危機にさらされている世界遺産」に登録された。2008年の第32回世界遺産委員会では、「ドレスデンのエルベ渓谷」の4車線のヴァルトシュリュスヘン橋の建設により文化的景観の完全性が損なわれるとして、世界遺産リストからの抹消も含めた審議を行ったが、橋の建設中止など地元での対応などを当面は静観することを決した。代替案としての地下トンネルの建設などにより景観の保護が行われず、このまま橋の建設が継続され完成した場合は、2009年の第33回世界遺産委員会での世界遺産リストからの抹消が余儀なくされることになっていた。この物件の取り扱いについては、第30回、第31回、第32回の世界遺産委員会で、慎重な審議が重ねられたが、ドレスデンの関係当局者は、文化的景観の中心部での4連のヴァルトシュリュスヘン橋の建設プロジェクトを中止しなかった為、2004年の世界遺産登録時の「顕著な普遍的価値」と「完全性」が喪失、2009年の第33回世界遺産委員会でのオマーンの「アラビアン・オリンピック保護区」に次ぐ、世界遺産登録史上二番目となる「世界遺産リストからの抹消」という不名誉な事態になった。しかしオマーンの抹消と異なり、世界遺産委員会は、“Every time we fail to preserve a site, we share the pain of the State Party.”という議長声明と共に、「ドレスデンのエルベ渓谷」は「顕著な普遍的価値」を有する箇所もあるので、ドイツは異なる登録基準と境界線のもとでの新登録の推薦書類を提出することは出来ると温情を示した。
     ──『世界遺産事典 1007全物件プロフィール 2015改訂版』(シンクタンクせとうち総合研究機構)

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