2017年2月14日火曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #019


019
新古今・巻十一
Shin-kokin(waka)-shu, vol.11
love
題知らず──伊勢
untitled
難波潟
みじかき蘆の
ふしの間も
逢はで此の世を
過ぐしてよとや
なにわがた
みじかきあしの
ふしのまも
あわでこのよを
すぐしてよとや
Naniwa gata
Mijikaki ashi no
Fushi no ma mo
Awade kono yo o
Sugushite yo to ya.
難波潟に生える短い葦の節と節の間のように、ほんの少しの間もあなたに逢うことなく、この世を過していけとおっしゃるのですか
Short as the joist of bamboo reeds
That grow beside the sea
On pebble beach at Naniwa,
I hope the time may be,
When thou’rt away from me.
離れた心を一生取り戻せない絶望感
上の句の自然の景から、下の句の心情へ「ふしのま」で結び、強い情熱を流れるように一気に詠んだ名歌である。「この世を過ぐしてよとや」という表現に、ただ単に男の足が遠のいているだけでなく、その心変わりや、あるいは二度と自分のもとを訪れないかもしれないという、絶望感が漂い、恋の終わりを予感させる。
この歌の影響か、葦の節は短いものと思われているが、実際はイネ科の植物の中でも節間は長いほうである。「短き葦」との詠みから、春の生長し始めた常態か、秋の刈り取りのあとに生えたものを指していると読みとれる。
実際、『伊勢集』の詞書(ことばがき)には「秋ごろうたての人の物いひけるに」として見え、季節が秋と限定されている。
「うたての人」とは「つれない人」の意味で、この歌は恋人藤原仲平(ふじわらのなかひら)へ宛てた返歌であった。この失恋に心を痛めた伊勢だが、この後、宇多天皇をはじめとする数々の男性と浮き名を流すことになる。
The Pricess Ise was the daughter of Tsugukage Fujiwara, the Governor of the Province of Ise; hence her name. She lived at the Imperial Court, and was the favorite maid of honor of the Emperor Uda, who reigned A.D. 888-897. She was noted for her talents and gentle disposition, and was the mother of Prince Katsura. Naniwa is the old name of Osaka.
[The picture shows the Princess on the pebble beach at Naniwa, and to the left are the bamboo reeds.]
伊勢 いせ THE PRICESS ISE
生没年未詳(一説には陽明天皇即位の877939と伝えられる)。伊勢守藤原継蔭(ふじわらのつぐかげ)の娘。寛平4(892)年ころから七条の后に仕え、のち宇多天皇の寵愛をうけて行明親王(桂宮・かつらのみや)を生んだので「伊勢(父の官職名)の御(ご)」と称せられた。
36歌仙の一人。古今集時代を代表する閨秀(けいしゅう)歌人で、「後撰集」(69首)「古今集」などの勅撰集に180首はいっている。家集に「伊勢集」がある。

新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)
鎌倉初期、八代集最後の勅撰和歌集
略称『新古今集』。1205年完成。20巻。歌数約1980首。後鳥羽上皇の命で藤原定家《歌097》、藤原家隆《歌098》、寂蓮《歌087》らが撰び、上皇の親撰。幽玄・妖艶・象徴的ないわゆる新古今調をつくり、万葉・古今とともに三大歌風をなす。本歌取り、体言止め、三句切れなどが特色。
  ──『日本史事典』

PHOTO (F):
河川敷に広がる葦原.JPG by あおもりくま ( Aomorikuma )
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=ファイル:河川敷に広がる葦原.JPG&oldid=19169509

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。






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