2017年3月4日土曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #025


025
後撰・巻十一
Gosen(waka)-shu, vol.11
love
女の許に遣しける──三条右大臣
sending to a woman
名にし負はば
逢坂山の
さねかづら
人に知られで
来るよしもがな
なにしおわば
おうさかやまの
さねかずら
ひとにしられで
くるよしもがな
Na ni shi owaba
Ausaka yama no
Sanekazura
Hito ni shirarede
Kuru yoshi mo gana.
「逢って寝る」という名をもつ逢坂山のさねかずらならば、そのつるをたぐるように、誰にも知られずに来る方法があればいいのだがなあ
I hear thou art as modest as
The little creeping spray
Upon Mont Osaka, which hides
Beneath the grass; then, pray,
Wander with me to-day.
技巧を凝らした心のつぶやき
つる草のさねかずらとともに恋人へ送った、「あなたのもとへ逢いに行きたい」という心のつぶやきをストレートに歌った一首。気持ちはストレートだが、「あう」「さね」「くる」の3つの掛詞を使った技巧的な歌でもある。
男性の立場では、女性のもとへ「行く」となるが、心を女性のもとに置き、そこへ自分が「来る」というふうに表現する。「来る」=「行く」は《歌021》もそうであるように、よく使われる表現である。
The writer’s real name was Sadakata Fujiwara, and he died A.D. 932. For an account of the Fujiwara family see verse No. 18. Mount Osaka mentioned here is the same place as that referred to in verse No. 10, and when spelled Ausaka it means ‘a hill of meeting’. The suggestion is, that if she is really like the creeping vine which grows on Meeting Hill, she will come and meet him.
三条右大臣 さんじょうのうだいじん THE MINISTER-OF-THE-RIGHT OF THE SANJO (DISTRICT OF KYOTO)
藤原定方(ふじわらのさだかた・873932)。内大臣高藤の次男。延喜6(906)年右権中将。醍醐天皇の延長2(924)年正月、大納言から右大臣となる。邸が京都の三条にあったので三条右大臣とよばれた。兼輔《歌027》は従兄弟。
和歌を好み、管絃に秀でた才人であった。家集に「三条大臣集」があり、「古今集」に1首、「後撰集」に9首、「新勅撰集」に4首など、勅撰集に16首はいっている。

後撰和歌集(ごせんわかしゅう)

平安中期、第2番目の勅撰和歌集。八代集の1つ
20巻。歌数約1400首。951年村上天皇の命で源順(みなもとのしたごう)ら「梨壺の五人」が編集。歌の作者はほぼ『古今和歌集』と重なり、撰者の歌は入れていない。特色として贈答歌が多く、詞書が長いことがあげられるが、これは歌集の物語化を意味する。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年3月3日金曜日

ひな祭り Hina Matsuri (Doll Festival)


3月ですね。
3日は雛祭(ひなまつり)、女の子が健やかに育つよう願いを込められた年中行事です。
本来は旧暦の3日に行われていたようですが、現代では新暦でお祝いすることが多いですね。
動画に使った文章を再度載せておきますね。

ひな祭り Hina Matsuri (Doll Festival)

3月3日には、各家庭でひな人形を飾り、とくに女の子の健やかな成長を願う。1000年以上前から、この季節に「ひとかた」を海に流して、自分の災難を追い払う行事があった。この人形が次第に家の中に飾るものに変化していった。最も典型的なものは、宮廷社会のありさまを表した人形飾りで、5段あるいは7段に飾られる。女の子たちがこれを見ながら、お菓子を食べたり、食事をして楽しむ。
Dolls are displayed on March 3 in each household to wish for the healthy growth of daughters.  This festival originated more than a thousand years ago as a ritual at this time of year to drive away one's misfortune by letting the dolls be carried off to sea.  This tradition gradually evolved into the dolls being displayed in homes.  A typical display frequently depicts a slice of life at the imperial court, with five or seven rows of dolls.  Little girls eat sweets or a meal while enjoying the display.
  ──『心にひびく日本のしきたり TIES WITH THE PAST; Japanese Customs, Traditions and Manners』酒井信彦・監修(講談社バイリンガル・ブックス/2011年)

雛祭は「桃の節句」「上巳(じょうし)の節句」とも呼ばれ、庶民の行事である五節供(人日(じんじつ・1月7日)、上巳(3月3日)、端午(たんご・5月5日)、七夕(しちせき・7月7日)、重陽(ちょうよう・9月9日))のうちのひとつです。
そもそも節句とは、食物を供えて神々や祖先の霊を祀り、それを人々も分け合って食べることにより、神霊と人々相互の間に目に見えない一体感を得ようとした(『ブリタニカ国際大百科事典』)年間の節目の日だそうです。
節供と書くこともありますが、上記の意味からすれば、こちらの字のほうがふさわしいかもしれません。

上巳(じょうし)の節句

3月3日(旧暦3月3日)
◆人形に穢(けが)れを托(たく)して流してもらう厄落としの行事
 上巳の節句は、旧暦3月上旬の巳(み)の日(3月3日)の行事のことで、桃の節句といわれるように桃の花が咲く頃に行われる行事です。この日は雛人形を飾って女児の成長を祝う雛祭りが行われ、また春の訪れを喜び、磯遊びや山遊びに興じたりします。
 上巳は、もともと古代中国では邪気に見舞われやすい忌日(いみび)とされていました。そこで水辺に出て禊(みそぎ)を行い、自分の身代わりとして穢れを移した「人形(ひとがた)」を川に流しましたが、この人形が「雛人形」の元慶と考えられています。
 人形を流す風習は、『源氏物語』の須磨の巻にも記されているとおり、古くからある風習でした。次第に貴族の子供の間で行われていた「ひいな(雛)遊び」と結びつき、「雛祭り」の起源となりました。この「ひいな遊び」の「ひいな」も、幼児の枕元に置いて穢れを祓うお守りとしてした人形(ひとがた)でした。
 元来、「ひいな」は素朴なものでした。次第に手をかけた立派なものが作られるようになり、元の性格が薄まって、子供が飾って楽しめる現在のような雛人形になりました。
●流し雛は伝統的な禊の行事
 流し雛とは、3月の節句に雛人形を川に流し送る行事で、いまでも鳥取県などの地域では、この風習が残っています。呪具としての性格が強く、人形(ひとがた)の流し雛で身体をなでて穢れを祓い、流し去ります。
●風流な詩宴、曲水(きょくすい)の宴
 3月の上巳の日(のちに3月3日)に平安時代の貴族たちの間で行われていた風流な年中行事。雅楽が流れるなか、曲がりくねりながら流れる水のほとりに貴族たちが座り、流れてきた杯が自分の前を通り過ぎないうちに短歌を読み上げるというものです。杯を取り上げて酒を飲み、次に流すという雅な遊びで、その起源は中国の周の時代とされています。
●雛人形の役割
 平安時代には上巳の節句の人形(ひとがた)は「形代(かたしろ)」「撫物(なでもの)」などと呼ばれていました。形代は身代わり人形のことで、撫物は人形の身体をなで、これに穢れを移すところから出た呼び名です。
 雛人形は大別すると紙雛と土雛があり、紙雛は撫物の系列で、流し雛などに用いられました。他方、土雛は工芸品として発達していきます。また近世以降の工芸的な雛人形には立雛(たちびな)と坐雛(すわりびな)があり、ここから男雛(おびな)・女雛(めびな)の別が生まれ、1対の夫婦雛として扱われるようになりました。
●桃の節句
 「桃は五行の精なり」といって、中国では邪気を祓い百鬼を制すという魔よけの信仰がありました。またかつては白酒に桃の花弁を浮かべた「桃花(とうか)酒」も飲まれていました。
●雛祭り
 雛祭りは、雛人形を飾り、親類や親しい友人などを招いて女の子の成長を祝う行事です。
 雛祭りに雛人形を飾って祝うようになったのは、室町時代からといわれています。当時は貴族や武家などの上流社会や京都といった一部の都市だけで行われていました。江戸時代になると五節句の1つに定められたこともあり、庶民の間でも広く行われるようになりました。
●雛人形の飾り方
 お雛様の一夜飾りは縁起が悪いとされており、雛祭りの1週間から10日前あたりに飾り始めるのが一般的です。
・1段目…内裏雛
 内裏雛の飾り方は、関東と関西では左右が反対です。雛壇に向かって左に男雛、右に女雛が関東流で、その逆が関西流です。現在は関東流が一般的です。屏風を背に内裏百人一首なの両脇にはぼんぼり、中央に1対の瓶子(へいし・徳利)を置きます。
・2段目…三人官女
 左からそれぞれ堤子(ひさげ)、三方(さんぽう)、長柄銚子(ながえのちょうし)を持っています。
・3段目…五人囃子(ばやし)
 左から太鼓、大鼓(おおつづみ)、小鼓、笛、謡(うたい)の順で並び、日本の古典芸術・能の囃子方(はやしかた)を模しています。
・4段目…随身
 4段目は向かって右が左大臣、左が右大臣です。左大臣は最高位の官人で老人、右大臣は若者で、ともに内裏雛を補助します。その間に菱餅や白酒、あられなどの膳部を飾ります。
・5段目…仕丁(しちょう)
 立傘、踏台、台笠をもつ仕丁(雑役を司る者)がいて、笑い、真面目、泣きの表情をしています。この三仕丁の左に右近の橘、右に左近の桜を配置します。この2種類の樹木は宮廷の庭をたとえています。
・6段、7段目…雛道具
 たんす、長持、鏡台、針箱、駕籠(かご)、御所車(ごしょぐるま)などの嫁入り道具を飾ります。
●雛人形の片づけ方
 片づけは3月3日の翌日には済ませるようにします。片づけが遅れると娘が縁遠くなるという俗信があります。
 また、古くなったお雛様は捨てずに、焼いて供養するのが、一般的な習わしです。
①扇などの小物をはずし、乾いた筆でていねいにほこりを取ります。
②やわらかい薄紙で顔を包みます。
③防虫剤などを入れ、隙間には丸めた薄紙を入れて固定します。
●雛祭りのごちそう
 雛祭りには春の素材をふんだんに使った色鮮やかなちらし寿司のほかに、定番の草餅、菱餅、雛あられ、蛤(はまぐり)のお吸い物、白酒などが用意されます。それぞれに昔からの由来があります。
・草餅
 雛祭りは「草餅の節句」ともいわれるように、草餅は雛祭りには欠かせないものになっています。古くは母子草(ははこぐさ)が使われ、後によもぎを使って作るようになりました。母子草とよもぎは薬草で、邪気を祓う魔よけの効果があると信じられてきました。
・菱餅
 上から赤、白、緑の3枚の餅を菱形に切って重ねたもの。
 3色は、それぞれ桃の花、白酒、よもぎを表しています。また、赤は疫病よけ・魔よけ、白は清浄、緑のよもぎは邪気を祓う力があるといわれています。尖った菱形は、竜に襲われそうになった娘を菱の実で退治して救ったという、インド仏典の説話に由来しています。その形に、娘の健やかな成長を願う気持が込められるようになったといわれています。
・雛あられ
 餅や豆などに砂糖をからめて炒ったものです。あられはもともと携帯用の食べものでした。炒ったときによくはぜると吉、あまりはぜないと凶と、昔はその年の吉凶を占ったともいわれています。
・蛤のお吸い物
 旧暦3月3日には海岸に出て、磯遊びをする風習がありました。雛祭りのお吸い物に蛤を用いるのは、採った貝類を神様に供え、その後に食べて祝った名残といわれています。
 また貝合わせの遊びで知られているように、蛤には夫婦和合の願いが込められているとか、汚れた海には住まないので純潔を意味するなどともいわれています。
・白酒
 白酒は子どもでも飲めるように、餅米の粥に麹(こうじ)を加えて醸(かも)した甘い香りのするお酒です。
 白酒が雛祭りに飲まれるようになったのは、江戸時代後期からです。当時は祭りや婚礼など、特別な日だけに作られていたといいます。
  ──『和ごよみと四季の暮らし』新谷尚紀・監修(日本文芸社/2007年)

最近は、住宅事情なのか檀飾りの雛人形は見なくなった気がします。
人形店に展示されているものも、ほとんどがお内裏様とお雛様、夫婦雛だけがガラスケースに入っている人形ばかり目につきます。
私が子どもの頃、女の子の家にお呼ばれしたときは、雛壇の前で食事をいただいたものでしたが──。
まぁ、和室がある家も少なくなってますし、仮にあってもそんなに広くないでしょうし。
場所をとる上に、飾る・しまうの手間がありますからね、仕方ないんでしょう。

初節句に飾る吊るし雛をアレンジした吊るし飾りを趣味として作る方も増えているようですね。
先日偶然立ち寄った施設で、吊るし飾りの展示をされていたグループの指導者の方と、いろんなお話を伺いました。
モノづくりが好きな「cocolo supplie ココロさぷり」にはいい刺激になりました。

さて、動画に用いた素材にも触れなくちゃ。
写真は AC WORKS さん(これはサイトを運営している会社名で、写真の他にもイラストやシルエットなど各種素材を提供されています。興味がある方は末尾のバナーからどうぞ)と Photo Library さん(https://www.photolibrary.jp/)。
どちらもかなりの頻度でお世話になっています。
高品質の写真を取り揃えているので、どちらのサイトも重宝しています。
いつもありがとうございます。
Photo Library さんは「百人一首 100 verses by 100 poets」シリーズで主に使わせていただいてます。

音楽は音楽研究所さん (http://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/musj.html)による童謡のアレンジなので、皆さんよくご存知でしょう。
以前にも使わせていただいてますが、その動画はコチラ
(時期的にはちょっとズレがありますが)

なお、この動画は「annual events in Japan 日本の年中行事」シリーズとして再生リストに登録してあります。
季節モノなので、その時期にご覧いただくほうがいいと思うので、リンクはなしです。
「時期に関係ない観たい」という方は、検索するか、チャンネルのトップから再生リストを見てみてください。
トップページ⇒https://goo.gl/XkZufY










2017年3月2日木曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #024



024
古今・巻九
Kokin(waka)-shu, vol.9
travel
朱雀院の奈良におはしましける時に手向山にて詠める──すがはらの朝臣
at Mt. Tamuke when Retired Emperor Suzaku went to Nara
此のたびは
幣もとりあへず
手向山
紅葉の錦
神のまにまに
このたびは
ぬさもとりあえず
たむけやま
もみじのにしき
かみのまにまに
Kono tabi wa
Nusa mo tori-aezu
Tamuke-yama
Momiji no nishiki
Kami no mani-mani
今回の旅は突然のことで、お供えの幣も持ち合わせておりません。とりあえずは、この手向山の錦織のように見事な紅葉を幣として、神の御心のままにお受け取り下さい
I bring no prayers on colored silk
To deck thy shrine to-day,
But take instead these maple leaves,
That grow at Tamuké ;
Finer than silk are they.
紅葉を神に捧げる粋な計らい
昌泰(しょうたい)元(898)年の宇多(うだ)院の御幸に同行した際に詠まれた一首。紅葉をたたえる歌は数あれど、その美しさを神に捧げる幣帛(へいはく)のかわりにすることで表した斬新な手法が印象的である。この発想は以後こぞって使われるようになる。
作者は右に出るものがいないほど漢学に精通していたという。「紅葉の錦」という表現も漢詩の影響を受けたもので、『万葉集』には見られない。
The name given above mean ‘A house of rushes’, but the poet’s real name was Michizane Sugawara; he was a great minister in the Emperor Uda’s reign and a learned scholar; his works comprise twelve books of poetry and two hundred volumes of history; he was degraded in A.D. 901. and died two years later, an exile in Kyushu, aged fiftey-nine. He is worshipped as Tenjin Sama, the God of Calligraphy, and is a favorite deity with schoolboys.
Nusa are strips of colored silk or cloth inscribed with prayers, which were presented at temples in the old days. Tamuke-yama no Hachiman, a temple at Nara, is the scene of this verse; it is famous for its maple leaves, and the poet intended to say, that the crimson cloro of its own maples was finer than any brocade that he could offer. Another allusion is, that Tamuke-yama, near Nara, means ‘The Hill of Offerings.’
菅家 かんけ KWAN-KE
菅原道真(845903)。参議従三位是善の子。文章博士菅原清公(きよきみ)の孫。幼少のころから文才を知られ、元慶元(877)年文章博士。宇多天皇の信任を得、昌泰(しょうたい)2(899)には右大臣と、異例の昇進をしたが、延喜元(901)年正月、左大臣藤原時平(ふじわらのときひら)を中心とする藤原氏の中傷により太宰権師(だざいのごんのそつ)に左遷され、九州の太宰府で同3年2月25日、50歳で没。
勅撰集には34首入首。編著書は「類従国史(るいじょうこくし)」「三代実録」「新撰万葉集」、詩集に「菅家文章」「菅家後集」がある。

古今和歌集(こきんわかしゅう)

平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
  ──『日本史事典』

PHOTO (F):

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年3月1日水曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #023


023
古今・巻四
Kokin(waka)-shu, vol.4
autumn
是貞の親王の家の歌合の歌──大江千里
at a competition at Prince Koresada’s house
月見れば
千々に物こそ
悲しけれ
我身一つの
秋にはあらねど
つきみれば
ちぢにものこそ
かなしけれ
わがみひとつの
あきにはあらねど
Tsuki mireba
Chiji ni mono koso
Kanashi kere
Waga mi hitotsu no
Aki ni wa aranado.
秋の月を見ると、あれこれとさまざまな物事が悲しく感じられることだ。秋は私ひとりの身の上に訪れたわけではないのだが
This night the cheerless autumn moon
Doth al my mind enthrall;
But others also have their griefs,
For autumn on us all
Hath cast her gloomy pall.
秋という季節が連れてくる物悲しさ
秋の夜長に月を見上げて、悲哀に満ちた気分を表現している。「月」と「我が身」、「千々」と「ひとつ」が対応して、己の孤独感をより深めているようだ。これは漢字の対句の技法で、この時代に漢字文の要素を和歌に取り入れて詠むことが流行し、なかでも大江千里は漢詩の翻案を得意としていた。秋を物悲しく感じ取る傾向も、漢詩の影響があるといわれる。
Chisato Oye is said to have lived about the end of the ninth century; he was the son of a Councillor, and a very fertile poet. He was also famous as a philosopher, and acted as tutor to the Emperor Seiwa, who reigned A.D. 859-876.
大江千里 おおえのちさと CHISATO OYE
生没年未詳。参議従三位大江音人(おとんど)の第二子。行平《歌016》、業平《歌017》の甥。玉淵(たまぶち)、春潭(はるぶち)、千古は兄弟。平安朝の人で延喜3(903)年に兵部大丞に任ぜられる。
文学にすぐれ、寛平6(894)年宇多天皇の命により、古い漢詩句を題として詠んだ「句題和歌」(大江千里集)ともいわれる家集)を詠進した。歌人としては勅撰集に25首入首。

古今和歌集(こきんわかしゅう)

平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年2月25日土曜日

「wa-gocolo supplie 和ゴコロさぷり」の目指すもの

ご訪問ありがとうございます。

先日、本ブログについての感想をいただきました。
ありがとうございます。
残念ながら、コメント欄に入力していただいたわけではなく、別の方からの口伝てで伺ったので、ご本人のお言葉をそのままご紹介できないのですが、「無難にまとまっているけど、何を言っているのかわからない」との趣旨でした。
手厳しいお言葉ですが、おかげでじっくりと自分を振り返る時間が持て、とてもよい機会になったと思います。
再度お礼申し上げます。

このブログ内の記事は、ほとんどが「cocolo supplie ココロさぷり」の言葉で語っているものですが、中には本からの引用を多用したものもあります。
引用箇所はわかるように

で囲った上、出典も記載してはいますが、どうやらそれでは主義・主張がないと捉えられるようです。

そもそもインターネット上で何かを公開する場合、ターゲットを絞り込んでその人たちからの濃いアクセスを集めるか、広く漠然とした内容でアクセスを待つのか、どちらかの選択をしなければならないのですが、「cocolo supplie ココロさぷり」では対象を絞り込むことはしていないので、後者をとりました。
動画自体も、老若男女問わず、また日本国内のみならず海外の方にも観ていただけるようなつくりにしています。
これは「cocolo supplie ココロさぷり」も「wa-gocolo supplie 和ゴコロさぷり」も同様です。

「cocolo supplie ココロさぷり」の動画は、いうなれば「冷蔵庫の残り物をどうアレンジして別物にするか」的発想で生まれたものですが、「wa-gocolo supplie 和ゴコロさぷり」は構成・コンセプトが先にあり、それに従って素材を集める形にしました。
ご覧いただいている動画はわずかな時間ですが、作り上げるためにかなりの時間を割いています、実は。
「こんなに苦労して作ったんですよ!」なんてことは制作側の勝手な都合であって、皆さんにお知らせすべきことではないと考えていますし、もし「cocolo supplie ココロさぷり」が観る側でも、そんなことを聞いたら「だから? 要は観て『快(好き)』か『不快(嫌い)』かだけでしょ!」と観る気持ちに水をさされる感じがします。

現在展開中の「百人一首 100 verses by 100 poets」シリーズの動画には、たくさんの情報があります。
和歌(歴史的かな遣い)はもちろん、かな表記、ローマ字表記、作者の画像も2種類あれば、歌意を表す画像、歌のイメージ……。
タイトルと部立の部分には平安時代にもてはやされた色合いを使っていますが、全体には江戸時代風に仕上げています。
どうしてこんなに情報が多いのかにもきちんと理由があります。
和歌には興味がなくても、その他の要素(日本語の成り立ちや古文書、伝統色・柄)などに興味をもってもらえたら──、と思ってのことです。
「和歌なんだから和歌だけあればそれで十分」という方もいらっしゃるでしょうし、「和歌には大して興味はないけど、日本的なものが好き」という方もいると思います。
そういうすべての方に、少なくとも「不快」にならないよう、配慮しているつもりです。

今回感想を寄せてくださった方が、どの記事を読まれたかはわかりませんが、おそらく最近のものだと思います。
であれば、「wa-gocolo supplie 和ゴコロさぷり」の「百人一首 100 verses by 100 poets」シリーズの記事である可能性が高いです。
お言葉の後半部分は「情報量が多くて、対象がぼやけている」とおっしゃりたかったのかもしれません。
ですが、前半部分の「無難にまとまっている」ということは、多くの人に不快感を与えないと解釈することもできるので、最低限の目標はクリアしたということになります。

さて、本記事のタイトルにある『「wa-gocolo supplie 和ゴコロさぷり」の目指すもの』ですが、まずは日本文化のカタログ的なものを作ろうと考えています。
ひとつひとつのものは情報量が少なくても、ヴァラエティに富んだものの中から皆さんが気に入ったものを調べるきっかけを作りたいんです。
(普段の会話が盛り上がる雑学的内容も含まれるかなぁ、特にブログは。)

1つのことに情熱を傾けられる方は、とてもラッキーですね、もうすでに「これだ!」というものを見つけているわけですから。
でもこれから見つけようとする人にとって、初めから専門的なことを提示されたら、「ちょっと敷居が高いかも……」と二の足踏んでしまうかもしれません。
特に外国人の方はそうでしょう。

正直に申し上げますが、私自身、和歌に対して強い興味があるわけではありませんし、専門的な知識があるかといえばまったくありません。
じゃあ、何故百人一首を取り上げたのか?
理由は簡単です。
「100もの動画を作れるから」

動画を作る作業の中にはデザイン的な事柄が多く含まれます。
それをするのが楽しいからです。
何も知らない人間が作るんですから、万人受けするものにならざるを得ないじゃないですか。
でも、それでいいと思っています。

日本人として生まれながらも、自国の文化を知ろうとして来なかった自分への戒めとして始めたんですが、自分がいかに知らないか痛感しています。
2020年には東京オリンピックが開催され、外国人観光客が街にあふれることでしょう。
彼らの質問に少しでも答えられるようにしておきたいものです。

知らないのに知っているように装うのは、皆さんにも失礼ですし、何の意味もありません。
知らないからこそ調べる。
調べた内容を自分の備忘録として動画・ブログ記事を公開する。
そういう立場で臨もうと考えています。

まずは、カタログを作る。
そこから1歩踏み込んだものを作る。

カタログ自体も、完成にはまだまだかなりの時間がかかると思います。
ですから、ちょくちょくチェックしてくださいね。
「cocolo supplie ココロさぷり」「wa-gocolo supplie 和ゴコロさぷり」共に原則毎週金曜日更新ですが、Googleアカウント(=Gメールアドレス)をお持ちの方は、YouTubeのチャンネル登録しておくと、メールで、アップロードされた動画の情報が送られてくるので便利ですよ。
「cocolo supplie ココロさぷり」⇒ https://goo.gl/2Kw70i
「wa-gocolo supplie 和ゴコロさぷり」⇒ https://goo.gl/XkZufY

twitter、facebookもあります。
https://twitter.com/cocolo_supplie
https://www.facebook.com/cocolosupplie/

今後とも「cocolo supplie ココロさぷり」「wa-gocolo supplie 和ゴコロさぷり」をよろしくお願いします。

最後に、今回貴重なご意見をくださった方にも再度感謝です。
ありがとうございます。

2017年2月22日水曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #022


022
古今・巻五
Kokin(waka)-shu, vol.5
autumn
是貞の親王(みこ)の家の歌合の歌──文屋やすひで
at a competition at Prince Koresada’s house
吹くからに
秋の草木の
しをるれば
むべ山風を
嵐と云ふらむ
ふくからに
あきのくさきの
しおるれば
むべやまかぜを
あらしというらん
Fuku kara ni
Aki no kusa ki no
Shiorureba
Mube yama kaze o
Arashi to iuramu.
吹くそばから、秋の草木がしおれるので、なるほど、山から吹き下ろす風のことを嵐といっているのだろう
The mountain wind in autumn time
Is well called ‘hurricane’;
It hurries canes and twigs along,
And whirls them o’er the plain
To scatter them again.
シンプルな詠みに隠れた言葉遊び
詞書(ことばがき)は「是貞の親王(みこ)の家の歌合の歌」となる。山から吹く秋の強風が草木を揺らし荒らして、しおらせるさまを思い浮かべ、なるほど、だから嵐(荒し)というのか、と納得する。
この歌には言語的な遊びの要素が組み込まれており、「山」から吹き下ろす「風」の2つの漢字を合わせると「嵐」の字になるということも同時にいっている。一見単純なようで、実は知性に富む歌である。
This well-known writer lived in the ninth century, and was the father of Asayasu, who composed verse No. 37; he was also Vice-Director of the Imperial Bureau of Fabrics.
The point of this verse lies in the ideographic characters of the original; yama kaze (mountain wind) being written with two characters, which, when combined, from arashi (hurricane), and this, of course, it is quite impossible to reproduce correctly in the translation.
[The picture shows the wind blowing down from the mountain behind the poet and waving his sleeves about.]
文屋康秀 ふんやのやすひで YASUHIDE FUNYA
生没年未詳。朝康(あさやす)《歌037》の父。元慶元(877)年正月、山城大掾(だいじょう)。同3年、縫殿助(ぬいどのすけ)に任じられ、のち三河掾として下る。このころ、小野小町《歌009》とのあいだに歌の贈答があったこが小町の歌の詞書からうかがえる。
技巧の歌にすぐれ、六歌仙の一人。勅撰集には「古今集」に5首、「後撰集」に1首はいっている。

古今和歌集(こきんわかしゅう)
平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。








2017年2月21日火曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #021


021
古今・巻十四
Kokin(waka)-shu, vol.14
love
題知らず──そせい法し
untitled
今来むと
云ひしばかりに
長月の
有明の月を
待ち出でつるかな
いまこんと
いいしばかりに
ながつきの
ありあけのつきを
まちいでつるかな
Ima komu to
Iishi bakari ni
Naga-tsuki no
Ariake no tsuki o
Machi idetsuru kana.
すぐに行くと、あなたが言ったばっかりに、毎晩待っているうちに、とうとう九月の有明の月が出てしまったことだ
The moon that shone the whole night through
This autumn morn I see,
As here I wait thy well-known step,
For thou didst promise me
I’ll surely come to thee.”
果たされぬ約束を責めながら月を見る
作者が女性の立場で詠んだ歌。事実を素直に詠み下した言葉は、通ってこない恋人に対する少しの皮肉をこめつつも、恨みの感情までは表していない。
古来、一晩待ち明かして有明の月を見てしまったという「一夜説」と、毎夜待ち暮らしているあいだに晩秋になり、長い夜さえも明かして有明の月をみてしまったという「月来(つきごろ)説」があるが、定家はより物語性の強い後者とみていたようだ。
Sosei is supposed to have been the son of Bishop Henjo, the writer of verse No. 12, born before the latter entered the church, about the year 850. His name as a layman was Hironobu Yoshimine, and he became abbot of the Monastery of Riyau-inwin at Iso-no-kami, in the Province of Yamato.
素性法師 そせいほうし THE PRIEST SOSEI
生没年未詳。良峯宗貞(僧正遍昭)《歌012》の子で、俗名は良峯玄利(よしみねのはるとし)。清和天皇に仕え、のち剃髪して素性と改め、寛平8(896)年に権津師となり、そののち大和石上守(いそのかみ)の良因院(りょういんいん)の住持(じゅうじ)となった。
36歌仙の一人で、「古今集」の32首をはじめ、勅撰集には「後撰集」などに65首はいっている。「素性法師集」がある。書にもすぐれていた。

古今和歌集(こきんわかしゅう)
平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。







シェア share