2017年4月1日土曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #038


038
拾遺・巻十四
Shui(waka)-shu, vol.14
love
題知らず──右近
untitled
忘らるる
身をば思はず
誓ひてし
人の命の
惜しくもあるかな
わすらるる
みをばおもわず
ちかいてし
ひとのいのちの
おしくもあるかな
Wasuraruru
Mi oba omowazu
Chikaite-shi
Hito no inochi no
Oshiku mo aru kana.
忘れられる私の身のことはなんとも思いません。ただ神に永遠の愛を誓ったあなたの命が罰を受けて失われるのが惜しまれてなりません
My broken heart I don’t lament,
To destiny I bow;
But thou hast broken solemn oaths,
I pray the Gods may now
Absolve thee from thy vow.
恋慕と皮肉と後悔と
神に誓い合った愛が破れて、自分の身はどうなっても構わないが、心変わりした相手の身を案じる、悲しい女心を歌った。相手を恨みきれない未練が感じられるが、一方で、強烈な皮肉にもとれる。また、神にまで誓ってしまった自分の愚かしさを悔やんでいるように思える。いずれにしろ、実感のこもる女心である。
『大和物語』などにも見える歌だが、それによれば、歌の相手は藤原敦忠(ふじわらのあつただ)《歌043》であるようだ。
The Lady Ukon is supposed to have been deserted by her husband, and in this poem she regrets, not so much her own sorrow, as the fact that he has broken his sworn oath, and is therefore in danger of divine vengeance.
[The illustration show her all alone at the gate, with the house in the background, evidently waiting for the husband who has forsaken her.]
右近 うこん UKON
生没年未詳。右近衛少将藤原季繩(ふじわらのすえつな)の娘で、右近とは父の官職にちなむ呼称である。醍醐(だいご)天皇の皇后七条穏子(おんし)に仕えた。「大和物語」によると、《歌043》の「逢ひ見ての……」の作者権中納言藤原敦忠(あつただ)との愛と失恋や、桃園宰相源保光(みなもとのやすみつ)などとの愛がうかがえる。
「後撰集」に5首、「拾遺集」に3首、「新勅撰集」に1首はいっている。

拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)

平安中期、第3番目の勅撰和歌集。八代集の1つ
100509年成立。20巻。歌数約1350首。撰者は花山院、藤原公任《歌055》の2説がある。風情が可憐で調べはしめやか。歌風としての優雅を完成した。集名は『古今和歌集』『後撰和歌集』にもれ遺(のこ)ったものを拾うの意による。
  ──『日本史事典』

PHOTO (F): Kibune7234.jpg by mariemon
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動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年3月27日月曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #037



037
後撰・巻六
Gosen(waka)-shu, vol.6
autumn
延喜御時歌めしければ──文屋朝康
presenting in Engi era
白露に
風の吹きしく
秋の野は
つらぬきとめぬ
玉ぞ散りける
しらつゆに
かぜのふきしく
あきののは
つらぬきとめぬ
たまぞちりける
Shira tsuyu ni
Kaze no fukishiku
Aki no no wa
Tsuranuki-tomenu
Tama zo chiri keru.
葉の上に光る白露に風が吹き付ける秋の野は、紐で貫きとめていない玉が散りこぼれているようだ
This lovely morn the dewdrops flash
Like diamonds on the grass---
A blaze of sparkling jewels! But
The autumn wind, alas!
Scatters them as I pass.
露は涙かはかない命か
草に置いた露を玉に見立て、風に吹き飛ばされるさまに散らばる玉のきらめきを見た美しい歌である。見立ての歌でありながら、実際の秋の野の風景がありありと思い浮かぶところも魅力である。
露は命や涙を暗示する歌語であり、それが抵抗するすべもなく風に翻弄されて散っていく姿に、一種の無常観を見ることもできる。美しさの中に荒涼とした寂寥感を含んだ一首である。
Asayasu, the son of the author of verse No. 22, lived about the end of the ninth century. He is said to have composed this verse at the request of the Emperor Daigo in the year 900. To liken the dewdrops to jewels or beads (tama) is typical of Japanese verse.
[The picture shows the grass, and the dewdrops scattered on the ground in front of the poet.]
文屋朝康 ふんやのあさやす ASAYASU FUNYA
生没年未詳。康秀《歌022》の子と伝えられるが定かでない。一説には駿河掾(するがのじょう)から延喜2(902)年に大舎人允(おおとねりのじょう)にすすんだと伝えられる。
「寛平御時后宮歌合」の作者であったことが「古今集」で知られる。勅撰集は「古今集」に1首、「後撰集」に2首はいっている。なお、契沖は《歌022》の「吹くからに……」は康秀の作ではなく朝康の作であるとしており、この説によると百人一首に朝康の歌が2首はいっていることになる。

後撰和歌集(ごせんわかしゅう)

平安中期、第2番目の勅撰和歌集。八代集の1つ
20巻。歌数約1400首。951年村上天皇の命で源順(みなもとのしたごう)ら「梨壺の五人」が編集。歌の作者はほぼ『古今和歌集』と重なり、撰者の歌は入れていない。特色として贈答歌が多く、詞書が長いことがあげられるが、これは歌集の物語化を意味する。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年3月26日日曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #036


036
古今・巻三
Kokin(waka)-shu, vol.3
summer
月のおもしろかりける夜曉方(あかつきがた)によめる──ふかやぶ
at dawn of interesting moon
夏の夜は
まだ宵ながら
明けぬるを
雲のいづこに
月宿るらむ
なつのよは
まだよいながら
あけぬるを
くものいずこに
つきやどるらむ
Natsu no yo wa
Mada yoi nagara
Akenuru o
Kumo no izuko ni
Tsuki yadoruramu.
短い夏の夜は、まだ宵のくちと思っているうちに明けてしまったので、月は雲のどかに隠れて宿っているのだろうか
Too short the lovely summer night,
Too soon ‘tis passed away;
I watched to see behind which cloud
The moon would chance to stay,
And here’s the dawn of day!
見えない月を歌うめずらしい歌
あまりにも短い夏の夜、月はいったいどこに隠れているのか。「実際には見えない月」と「夏の夜」を題材とするのはめずらしいことで、斬新な試みと言える。よく詠まれる秋の長夜に対して、月が昇って沈む時間もないほどだ(だからどこか雲の陰に隠れているのだろう)と言って、夏の夜の短さを強調している。少々大げさな表現だが、おもしろい一首である。
Nothing is known of this writer, except that he was the father of the author of verse No. 42.
清原深養父 きよはらのふかやぶ FUKAYABU KIYOHARA
生没年未詳。「日本書紀」の撰者舎人親王(とねりしんのう)の子孫、房則(ふさのり)の子。元輔(もとすけ)《歌042》の祖父、「枕草子」の作者清少納言《歌062》の曽祖父。延長元(923)年内蔵大允(くらのだいじょう)。
琴の名手で、のちの36歌仙(後六々撰)の一人。家集に「深養父集」がる。「古今集」の17首など勅撰歌は41首。

古今和歌集(こきんわかしゅう)

平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
  ──『日本史事典』

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まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年3月25日土曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #035


035
古今・巻一
Kokin(waka)-shu, vol.1
spring
初瀬に詣(まう)づるごとに宿りける人の家に、久しく宿らで、程へて後にいたれりければ、かの家の主人(あるじ)、「かく定かになむ宿りは在る」と言ひ出して侍(はべ)りければ、そこに立てりける梅の花を折りて詠める
when staying at someone’s for praying at Hatsuse, responding to the master’s word “quite a while since the last visit” with ume blossoms nearby
人はいさ
心も知らず
ふるさとは
花ぞ昔の
香ににほひける
ひとはいざ
こころもしらず
ふるさとは
はなぞむかしの
かににおいける
Hito wa iza
Kokoro mo shirazu
Furu sato wa
Hana zo mukashi no
Ka ni nioi keru.
あなたのお気持ちは、さあどうかわかりませんが、この古都奈良の地では、梅の花が昔と変わることなく香り、美しく咲いて迎えてくれますね
The village of my youth is gone,
New faces meet my gaze;
But still the blossoms at thy gate,
Whose perfume scents the ways,
Recall my childhood’s days.
梅の香りに呼び起こされる記憶
この歌には長い詞書(ことばがき)が付いている。それによると、作者が初瀬の長谷寺へ参詣した際に、昔なじみの宿へ寄り、そこの主人に最近足が遠のいていたことを咎められたので、梅の枝を手折り、添えて贈った歌である。
美しい梅の花と春の風景を回想し、人の心が移り変わることを対比させた構成が見事である。「人はいさ」と詠みだすところに多少の皮肉が感じられるが、そんなことも冗談のように言い合えるふたりの親密な関係がかいま見える。ちなみにこの歌に対する主人の返歌は「花だにもおなじ心に咲くものを植えたる人の心知らなむ」。主人は女性であったという説もあり、恋歌としても読める。
The writer of this verse, who lived A.D. 884-946, was a nobleman at Court, one of the greatest of the classical poets, and the first writer of Japanese prose. He was the chief compiler of the Kokinshiu, in which work he was assisted by the authors of verses Nos. 29, 30, and 33. This work consists of twenty volumes, containing some eleven hundred verses, and was completed in the year 922. It is related that Tsurayuki once visited a friend after a long absence; and on being asked jestingly by the latter, how he could remember the way after such a long interval of time, the poet broke off a spray of blossoms from a plum tree growing at the entrance, and presented it to his friend with this impromptu verse.
紀貫之 きのつらゆき TSURAYUKI KI
生没年未詳、一説に868945とある。望行(もちゆき)の子。延喜5(906)年御書所預(みふみどころあずかり)となり、この年に躬恒《歌029》、忠岑《歌030》、友則《歌033》らと勅撰歌集の第一集である「古今和歌集」の撰者に選ばれ、これまで漢文で書いていた例を破り、仮名まじり序文を書いた。のち土佐守在任中、任地で勅命により「新撰和歌集」を撰集した。帰途の記が「土佐日記」である。
36歌仙の一人。家集に「貫之集」。勅撰集には444首はいっており、これは定家《歌097》についで多い。「万葉集」の柿本人麿《歌003》とならぶ歌聖と称される。

古今和歌集(こきんわかしゅう)

平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
  ──『日本史事典』

動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。
(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。





2017年3月20日月曜日

百人一首 100 verses by 100 poets #034


034
古今・巻十七
Kokin(waka)-shu, vol.17
other
題知らず──藤原興風
untitled
誰をかも
知る人にせむ
高砂の
松も昔の
友ならなくに
たれをかも
しるひとにせん
たかさごの
まつもむかしの
ともならなくに
Tare wo ka mo
Shiru hito nisemu
Takasago no
Matsu mo mukashi no
Tomo nara-naku ni.
老いた私は、誰を長年の友人としようか。高砂の松の老木でさえ、昔からの友ではないのだから
Gone are my old familiar friends,
The men I used to know;
Yet still on Takasago beach
The same old pine trees grow,
That I knew long ago.
松を友とする孤独な嘆き
長寿は誰もが願うことであるが、年老いた作者の周りでは、一人、また一人と親しい人が去ってゆき、とうとう残された者は自分一人になってしまった。自分と同じぐらい長生きなのは松ぐらいだが、松は話し相手にはならない。
松は長寿の象徴で縁起ものとして詠まれることが多いが、ここでは老いたわが身を松に重ね合わせながらも、いつかは死にゆく人間のはかなさを際立たせているようだ。
Okikaze, the son of michinari, was an official in the Province of Sagami in the year 911; the date of his death is unknown, but he is mentioned as being alive as late as the year 914. Takasago, which is mentioned again in verse No. 73, is a seaside place in the Province of Harima, famous for its pine trees; the pine tree is one of the recognized emblems of lone life in Japan, because it is believed that after a thousand years its sap turns to amber.
藤原興風 ふじわらのおきかぜ OKIKAZE FUJIWARA
生没年未詳。道成の子。延喜14914)年、下総権大掾(しもふさごんだいじょう)。琴の名手として知られ、36歌仙の一人でもある。
紀貫之《歌035》らと屏風歌もつくっているので、当代にはかなり知られた歌人。家集「興風集」があり、勅撰の歌は「古今集」に17首、「後撰集」などに21首の計38首ある。

古今和歌集(こきんわかしゅう)

平安中期、日本最初の勅撰和歌集
略称『古今集』。20巻。歌数約1100首。醍醐(だいご)天皇の勅により編集を始め、905(延喜5)年撰進された。撰者は紀貫之《歌035》、凡河内躬恒《歌029》、紀友則《歌033》、壬生忠岑《歌030》ら。『万葉集』に入らなかった古歌とそれ以後の新しい歌を集大成したもので、巻頭に貫之の「仮名序」、巻尾に紀淑望(よしもち)の「真名序」を置く。歌風は七五調・体言止めが多く、優美典雅、理知的で機知を尊ぶ。のちの勅撰和歌集の理想となった。代表歌人としては撰者らのほかに六歌仙がいる。
  ──『日本史事典』

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動画の見方、ブログの読み方などの説明をしましょう。
まず、朗詠音声はプロのもので、左大臣光永さん(http://ogura100.roudokus.com/)による朗詠です。
BGMとして使用させていただいた曲は、雅楽『平調 越天楽』というもので、クラシック名曲サウンドライブラリーさん(http://classical-sound.seesaa.net/)からダウンロードしました。
動画では多くの画像を組み合わせています。
以下の画像をご参照ください。

(クリックすると拡大画像がご覧いただけます。)
まず右上の画像を見てください。
これは動画中の和歌部分の画像です。
各記号の示すものは以下のとおりです。

A…作品番号 number of the verse
1…作者 poet
2…作者肖像画 portrait of the poet
『錦百人一首あつま織』勝川春章(1775年)"Nishiki Hyakunin-isshu Azuma Ori" by Shunsho Katsukawa (1775)/国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/)(※#002除く except #002
3…作者肖像画 portrait of the poet
『今様百人一首吾妻錦』永楽屋東四郎(江戸時代後期?)"Imayo Hyakuninn-Isshu Azuma Nishiki" by Toshiro Erakuya (late Edo era?)
C…出典 origin
D…部立 category(左下画像参照 see the image of left down
それぞれの色は平安時代女房装束のかさねの色です。
四季はそれそれの着用時期に合わせたもの、恋・旅・他は通年での着用の色。
E…詞書 description
F…イメージ画像 image picture of the verse
基本的に明記されていないものはすべてPhoto Libraryさん(https://www.photolibrary.jp/)の写真です。
歌に詠まれた事象がメインですが、時刻、時期、場所などは歌の内容とは異なる場合がありますので、あくまで歌の世界を堪能する助けとして見てください。
当然ながら歌の詠まれた当時の写真ではありません。
なかには現代社会が映りこんでいるものもあります。
なお、恋の部立などの象徴的なものに関しては、独断でそれらしいものを選んでいます。
G…歌意イメージ画像 image picture of the meaning of the verse
英語の解説書にあった画像ですが、題名・作者など一切不明です。
18世紀の木版画とありますが、著者のWilliam N. Porter氏も作者はわからなかったようです。
(英語では画像について説明されている歌もありますが、日本語はありません。)
Sentences in [ ] describe about the picture.

右側の画像はブログの表に関してです。
この画像に用いている色は各部分を区別するためのもので、特に意味はありません。
黄色のアルファベットは動画のものと対応しています。
詳細は上記を参照願います。
緑のアルファベットはブログのみです。
H…歌 verse
これなくしては成り立たないので、当然動画にも入れています。
左:漢字かな表記(歴史的仮名遣い) LEFT: Kanji + Hiragana (old writing)
漢字を使っているもの、かなを使っているもの、漢字も異なるもの、かなりのヴァリエーションがありますが、個人的に見て美しいものを選んでいます。
中:ひらがな表記(現代仮名遣い) MIDDLE: Hiragana (modern writing)
右:ローマ字表記 RIGHT: rōmaji
I…歌意 meaning of the verse
日本語:『一冊でわかる百人一首』吉海直人・監修(成美堂出版)のものを採用しています。
English: from "A Hundred Verses from Old Japan: a translation of the hyaku-nin-isshu" by William N. Porter (TUTTLE PUBLISHING, 1979, first edition 1909 by The Clarendon Press, London)
J…解説 explanation of the verse
同上
same as above
K…作者について about the poet
Sorry.
No English.
Some have description by Mr. William N. Porter in J section.

余談ですが、動画の和歌部分上下の千代紙柄、背景の和紙素材はAC Worksさんの提供による素材を使っています。







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